ライフコラム

生きものがたり

悪食の深海魚「ミズウオ」 海の環境汚染伝える

2014/3/15

共食いをしていたミズウオ=東海大学海洋科学博物館提供

まず博物館周辺の海岸を歩いて、浜辺に打ち上げられているゴミを観察してもらう。そこには魚や海藻や貝殻などだけでなく、ビニール袋や発泡スチロールなどのプラスチック製品などもたくさん落ちている。海岸を歩いたあとで、10人ほどのグループに分かれて、標本にしておいたミズウオを解剖して食べているものを調べる。ミズウオの大きな黒い胃袋を開くと、中からタチウオ、カタクチイワシ、シラス、スルメイカなどの餌に交じってプラスチックゴミが出てくる。

子供たちは魚がプラスチックゴミを飲みこんでいるのを目の当たりにして、海の中になんとたくさんのゴミが捨てられて漂っているのかということに気が付くのだ。

ミズウオの胃の中から出たカタクチイワシとゴミ

■雌雄の性機能備える

ミズウオは繁殖生態も変わっている。駿河湾で採集したミズウオ11尾の生殖腺をくわしく調べたところ、すべての個体が卵巣と精巣の両方を持っていた。ハワイでの研究によると、その近海ではミズウオが産卵していて、しかもミズウオは1個体の体内で卵巣と精巣が同時に成熟していたという。つまり、ミズウオは同じ繁殖期にメスとして産卵もし、オスにもなって他の個体の卵を受精させる同時雌雄同体の魚なのだ。

魚の世界では、一生の間に性を変える種類が少なくないが、ミズウオのように雌雄の性機能を同時に備える魚種は多くはない。深海の中層で生活するミズウオは繁殖の相手と出合う機会が少ないので、他の個体と出合ったチャンスを無駄にしないように、いざというときにはメスとオスとどちらにもなれるのだろうと説明されている。

水魚の鰭(ひれ)やマントの信長か(建一郎)

(葛西臨海水族園園長 西 源二郎)

西 源二郎(にし・げんじろう) 1943年生まれ。専門は水族館学、魚類行動生態学。70年、東海大学の海洋科学博物館水族課学芸員となり、2004~09年に同博物館館長。同大学教授として全国の水族館で活躍する人材を育成した。11年から現職。著書に「水族館の仕事」など

※「生きものがたり」では日本経済新聞土曜夕刊の連載「野のしらべ」(社会面)と連動し、様々な生きものの四季折々の表情や人の暮らしとのかかわりを紹介します。

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