悪食の深海魚「ミズウオ」 海の環境汚染伝える

昨年6月に富士山が世界文化遺産に登録され、三保松原もその構成資産に含まれることになって、にわかに世間の関心を集め出した。三保松原の前に広がる駿河湾は湾口部の水深が2500メートル、三保付近の沖合でも1000メートルを超える日本一の深海湾なので、三保の海岸には冬季を中心に深海魚がよく打ち上げられる。ミズウオも三保の海岸に打ち上がる深海魚の常連である。

大きな鋭い犬歯特徴

三保の海岸に打ち上がった体長83センチのミズウオ=写真 佐藤武

長さ1メートルを超える細長い体に大きな背びれがついているので、バショウカジキに似ているが、深海にすむアオメエソやハダカエソなどに近いヒメ目の魚で、12月から翌年の5月にかけて、多い年には100尾近くも打ち上がる。私も今までに三保の海岸でミズウオを3尾見つけている。そのうちの1尾は打ち上がった直後で、体をくねらせてまだ動いていた。1メートル近い魚の発見はちょっとした感動だった。

ミズウオは筋肉の94%が水分という、その名の通り水っぽい魚なので、解剖して3枚におろしておくと、切身から水が浸みだしてきて体の周囲に水たまりができる。大きな口には、ナイフのような形の大きな鋭い犬歯が生えている。肉食恐竜のあごと歯に似ているという連想からだろうか、アレピザウルス・フェロックスと恐竜みたいな学名がつけられている。

ミズウオを長年研究していた元東海大学の久保田正先生によると、駿河湾でのこの魚の餌はスルメイカ、サクラエビ、タチウオ、ハシキンメなどで、表層から深海底近くにすむものまで多岐にわたっている。つまり、海の中で出合った餌と思うものは何でも食べてしまうようだ。

ミズウオの長い犬歯=東海大学海洋科学博物館提供

胃の中からはさらに、ビニールの破片やペットボトルの蓋、スーパーのレジ袋など、海中にただよう人間の捨てたゴミも出てくる。海岸のゴミは目に見えるが、海の中を漂うゴミは人目に触れることがほとんどない。ミズウオはそんな海の中の汚れを気付かせてくれる貴重な存在である。海岸に打ち上げられたミズウオがゴミをのみ込んでいた割合は、1970年代は61%だったが、2000年代前半には75%に増加した。目に見えない海の中でも環境汚染が進んでいるのだ。

三保松原の先にある東海大学海洋科学博物館はこのミズウオを使って、小学生を対象にした環境学習を行っている。