銀色の体で立ち泳ぎ 水族館の人気者タチウオ

水槽内で直立するタチウオ(東海大学海洋科学博物館提供)

銀色の体をきらりと光らせ、背びれをゆっくり波打たせながら直立しているタチウオは水族館で人気のある魚だ。しかし、体にはウロコがなく皮膚が弱いので、飼育が非常に難しい。銀色に光っているのはグアニンという生体物質。うかつに触るとべったりと手につき、魚はやけどをしたようになって弱ってしまう。タチウオを飼育するには、魚体に触らないように採集し、水族館まで運ばなければならない。

江戸時代から「太刀魚」 名の由来は形からか

東海大学海洋科学博物館にいた時に、何度かタチウオ釣りに参加した。夜になってから、いけすのある小型船に乗って沖に出かけ、サンマの切り身などを餌にして手釣りする。

水深は約30メートル。釣り上げたタチウオは糸を持って船のいけすまで運び、ペンチで釣り針をつかんで外し、そっといけすに落とす。釣った魚は船からトラックのいけすに、トラックから水族館の水槽へと、大きなバケツで水ごとすくい上げ、とにかく魚に触れぬように注意して運ぶ。このように慎重に仕事しても、針のかかり方が悪かったり、バケツの中で傷ついたりして、結局は半分くらいしか残らない。

水槽に無事収容できたところで、なかなか餌を食べてくれない。生きたイワシなどを与えるのだが、餌付くのは1割くらいだし、餌を食べるようになってからでも、狭い水槽で口先を傷めて、3~4カ月で飼育が終わってしまう。このためタチウオを周年展示するには、年に数回採集しなくてはならない。タチウオを飼っている水族館はいくつかあるが、長く飼えている例はほとんどない。

直立している姿を見た人から「立って泳ぐから、タチウオですか」と聞かれることがよくある。魚の本にも、最近ではこの魚の名前の由来は、形が太刀に似ているからという説と立って泳ぐからという説があると書かれるようになった。

背ビレを波打たせて泳ぐタチウオ(葛西臨海水族園提供)

タチウオが立って泳ぐ姿を海で見た人はほとんどいないだろうし、水族館で飼育できるようになったのは、昭和も後半になってからだ。一方、江戸時代にすでに「太刀魚」と書かれているので、タチウオの名の由来は、太刀に間違いないはずだ。しかしこの魚の立ち姿には「立ち魚」が基になったのかと思わせるほど強いインパクトがあるということなのだろう。