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ライフコラム
生きものがたり

2014/4/12

生きものがたり

南日本に生息するミナミメダカ=葛西臨海水族園提供

水族園のホームページに10年から掲載した「東京メダカマップ」には、メダカ生息地の新しい情報が毎年数件寄せられている。ほとんどが他の地域からの移入群であったが、本来の東日本型のDNAを持つ群れも2群見つかった。現在、「東京めだか」である可能性が残されているのは、野生状態の3群と、調査開始以前に採集し飼育されている2群の合計5群となっている。人知れず生息している別の「東京めだか」がどこかで見つかることを期待している。

消えた「メダカ」の魚名 「キタ」と「ミナミ」に

昔からずっと、日本中のメダカは全部が同じメダカの名前で親しまれてきたが、その名が昨年、正式の日本魚名リストから消えてしまった。日本全国のメダカのうち、北日本に分布する1集団を新種にする報告が12年に出され、昨年にはこの北日本集団をキタノメダカと呼ぶことが提唱された。同時にその他の南日本の9つの地域集団のメダカはミナミメダカとされ、つまり、メダカという昔から親しまれてきた魚名はなくなってしまったのである。

両者の違いは、ミナミメダカはオスの背びれの切れ込みが深いのに対して、キタでは浅い。さらに、キタは体の後半部に濃い網目模様があるのに、ミナミではないという2点である。正直なところ、見慣れないと見分けがつきにくい。今まで、親しまれてきたメダカという名前を残すと、混乱するということから新しい2つの名前になったのだが、やはり寂しい気がする。

走り来ていまはメダカに癒(いや)されて(正比古)

(葛西臨海水族園前園長 西 源二郎)

西 源二郎(にし・げんじろう) 1943年生まれ。専門は水族館学、魚類行動生態学。70年、東海大学の海洋科学博物館水族課学芸員となり、2004~09年に同博物館館長。同大学教授として全国の水族館で活躍する人材を育成した。11年4月から14年3月、葛西臨海水族園園長。著書に「水族館の仕事」など

※「生きものがたり」では日本経済新聞土曜夕刊の連載「野のしらべ」(社会面)と連動し、様々な生きものの四季折々の表情や人の暮らしとのかかわりを紹介します。

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