ライフコラム

生きものがたり

みかんを食べるブリ 「養殖魚の王」新時代

2014/2/15

大水槽を遊泳するブリ=魚津水族館提供

また最近は、環境に配慮して生産された商品を選ぶのに、消費者が見てすぐに分かる「エコラベル」が設定され、さまざまな分野で採用されるようになった。水産養殖においても水産養殖管理協議会(ASC)の認証制度が国際的にスタートし、サケやティラピアの養殖で実施されている。これらは日本での養殖があまり盛んでない魚種だが、今はブリについての認証制度が検討されている。養殖場所の自然環境や生物多様性に悪影響を与えない、薬物を過剰に投与しない、餌を過剰に利用しないなどの基準案が作成されつつある。

■アメリカでもブリは人気に

ブリ養殖は高度成長時代に増えて、水質汚染や抗生物質の使い過ぎなどマイナスイメージが続いたが、最近は養殖ブリを巡る明るい話題が出てきた。愛媛県のみかんブリ、徳島県のスダチブリ、大分県のカボスブリなど、かんきつ類を餌に混ぜて与えたブリは、抗酸化作用のあるビタミンEが増えて、刺し身にした時の色の劣化が防げるうえ、さっぱりした味になるというので評判だ。

また、国内だけでなく、アメリカでもブリの人気が高まっている。冷凍切り身の脂ののった食感がアメリカ人に好評で、和食ブームにも乗ってすしネタや刺し身として好まれている。最近の5年間で輸出量は5倍近く増加したという。

ウナギやマグロなど種苗生産がまだ難しい魚種と違って、ブリは人工的に種苗生産することもできる。このため、寄生虫に強い魚を選抜して養殖に適した家系を作る育種研究や、飼育条件をコントロールして自然環境よりも早い時期に産卵させ、良い条件のもとで成長させる研究などが行われている。ブリは先端技術が試される養殖魚のトップランナーだ。

船底に暴れ太鼓か鰤(ぶり)大漁(正比古)

(葛西臨海水族園園長 西 源二郎)

西 源二郎(にし・げんじろう) 1943年生まれ。専門は水族館学、魚類行動生態学。70年、東海大学の海洋科学博物館水族課学芸員となり、2004~09年に同博物館館長。同大学教授として全国の水族館で活躍する人材を育成した。11年から現職。著書に「水族館の仕事」など

※「生きものがたり」では日本経済新聞土曜夕刊の連載「野のしらべ」(社会面)と連動し、様々な生きものの四季折々の表情や人の暮らしとのかかわりを紹介します。

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