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ニホンウナギに新たな謎 「海で一生」4割も

2013/10/12

 この夏はついに鰻(うなぎ)を食べなかった。高価になったということもあるが、絶滅危惧種に指定されたのが心理的に引っかかった。

■種苗生産が期待されるウナギ

産卵水槽内を泳ぐ親ウナギ(水産総合研究センター増養殖研究所)

 絶滅危惧種への指定は、もちろん数が減ったのが原因で、天然ウナギの漁獲量は最盛期の10分の1、養鰻(ようまん)に使うシラスウナギはなんと50分の1近くにまで減っている。それでシラスの入手が困難になり、養鰻業者は困っている。人間の手によってシラスを増やす種苗生産が強く期待されているわけだ。

 ちょうど1年前、種苗生産の最前線である増養殖研究所志布志庁舎(鹿児島県)を訪れる機会があった。そこで、直径30cmほどの透明なプラスチックボウルに似た飼育容器の底に、ウナギのレプトセファルス幼生が体をくねらせて泳いでいるのを見て感激した。

 ウナギのレプトは学生時代には幻の存在だった。ニホンウナギのレプトが初めて見つかったのが1967年で、それもたった1個体だけだった。

■種苗生産、軌道に乗るのも近いか

 産卵直前のウナギも見せてもらった。水量0.5立方メートルほどの産卵水槽にオス3尾と大きくお腹の膨れたメス1尾が入っている。産卵を促すホルモン注射をすると、15時間後に卵を産むようだ。

 ここでは1週間に1回のスケジュールで採卵し、育成のための技術的な研究にあてている。ほかの魚だと産卵シーズンを逃すと、来年まで待たなければならないが、ウナギは一年中いつでも好きな時に産卵させることができるという。この説明を聞いた時、ウナギの種苗生産が軌道に乗るのも近いと思った。

シラスウナギ。ここまで育てるのが大変

 しかしウナギは卵からシラスになるまでのレプトを育てる期間が半年から1年と長く、この時期の育成が非常に困難なのだ。産卵場はグアム島近くの深海で、卵からふ化したレプトは外洋の水深100~200m辺りで育つ。ただ、そこで何を食べているかは詳しく解明されていない。

 例えば、沿岸の表層で育つマダイやマグロの仔魚(しぎょ)は動物プランクトンを食べているので、それを大量培養して与えれば種苗生産も可能だ。しかしウナギのレプトは深い海の中で、上層から沈降してくるマリンスノーを食べていると予想されているだけだ。

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