2014/5/10

生きものがたり

双眼鏡がなくてもご安心あれ。声がスズメと違う。雄も雌も「キリリ、コロロ」とかわいい声で鳴く(強いて似ているとしたら、スズメが交尾の時に発する特別な声に近い)。また、雄のさえずりが風変わりで「ビーン」と濁って伸ばす、ラブソングらしからぬ鳴き方をする。

幼鳥の中には、くちばしの色がすぐに成鳥のような色になるものもいる

人から逃げないヒナ 拾わないで

色や声がわからないとカワラヒワがスズメに見えてしまうのは、くちばしの共通点による。太めのくちばしはカナリアやブンチョウ、ジュウシマツなど飼い鳥に多いが、小鳥の主流ではない。多くは細めのピンセット型のくちばしで、虫が主食である。太めのペンチ型は植物の種子を割って食べるので、飼うとしたらエサに困らない。

種子食のスズメでもひなには虫を与えるのに、カワラヒワはひなにも種子を与えるようだ。種子は消化しにくいので「そのう」が発達しているに違いない。飼い鳥のひなに給餌をした経験があればおわかりいただけると思うが、食道の一部が膨れて袋のようになる器官で、口にしたものを蓄え、唾液でやわらかくする働きもあるらしい。

虫に頼らない子育てなら夏が過ぎてもよいのでは、と思うのだが、カワラヒワも今が子育てシーズン。私が解説を担当した図鑑では、幼鳥も見分けられるように図示してもらったものの、幼鳥のくちばしの色の変化には個体差があるようだ。巣立ち前後に親のようなピンクになるものもいるが、成鳥にはない斑模様は夏まで見られる。

「野鳥の子は小さくない」と書いたが、巣立ち直後は尾が短く、小さくも見える。また、接近しても逃げないので、迷子と勘違いされて拾われてしまうことも多い。手を出す前に、野鳥の子育てを知ろうというキャンペーンが展開されているので、日本野鳥の会のホームページ(http://www.wbsj.org/)から「野鳥の子育て応援」で検索していただければ幸いだ。

図版の出典:「新・山野の鳥 改訂版」(日本野鳥の会発行)

(日本野鳥の会主席研究員 安西英明)

安西英明(あんざい・ひであき) 1956年生まれ。日本野鳥の会が81年、日本初のバードサンクチュアリに指定したウトナイ湖(北海道苫小牧市)にチーフレンジャーとして赴任。野鳥や環境教育をテーマとした講演で全国各地を巡る。著書に「スズメの少子化 カラスのいじめ」など

※「生きものがたり」では日本経済新聞土曜夕刊の連載「野のしらべ」(社会面)と連動し、様々な生きものの四季折々の表情や人の暮らしとのかかわりを紹介します。

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