生み出すのは私 心つかむ極意、日常に
Wの未来 会社が変わる
新たな風に揺り動かされ、会社のあり方や企業社会の価値観が変わっていく。そんな風を吹き込む女性(Woman)たちがあなたの近くにいませんか。
■飲んだ後に着眼
かつて世界大手の独壇場だったミネラルウオーター。日本コカ・コーラの「い・ろ・は・す」は発売4年目の2012年に小型ボトルの国内販売シェアで約5割に達する快進撃を続ける。開発チームを率いたのはウォーターカテゴリーマネジャー、小林麻美(35)だ。
結婚を機に退社し専業主婦などを経験したが「マーケティングの醍醐味をまた味わいたい」との思いが募り、以前の上司に掛け合って07年に再入社した。
担当したミネラルウオーターは味の評価は高いものの知名度が上がらない。悩んだ末にたどり着いたのが「飲んだ後」に着眼する発想の転換だった。従来より4割軽いボトルは女性の力でもぞうきんのように絞れ体積が半分になる。「環境だけで売れるのか」。社内に懸念もあったが「意識は変わっている」と力説。ボトルを絞るCMを面白がった若者たちが火を付けた。
日産自動車の新型「ノート」やキリンビールの「キリンフリー」……。女性が生み出す商品が女性だけでなく全ての人たちの間で次々ヒットを飛ばす。ニッセイ基礎研究所研究員の久我尚子は「女性の方が日常生活に密着し、細かい潜在的なニーズに気付きやすい」と指摘する。人々の好みや価値観が多様化する時代に、その力が発揮されるのは新製品開発ばかりではない。
■大黒柱は主婦
「来週は学校の遠足ね。弁当を包むナプキンを最前列に置こう」。ファッションセンターしまむら南与野店(さいたま市)の休憩時間は時に販売会議になる。店長の中野佳子(44)と14人の店員すべてが女性だ。
年間3億円超を1店舗で売る重責を担うが、中野は「工夫した分だけ数字で返ってくる」と前向き。主婦ならではのきめ細かい視点で陳列や接客に知恵を絞る。2人の子どもの教育費のため将来は正社員になりたいと、パートからの登用制度のあるしまむらを選んだ。当初は勤務時間の少ないパートとして働き、下の子が小学校に入る前年の04年に正社員になった。
同社は全国約1700店の7割がパート出身の女性店長。主婦パワーで13年2月期まで4期続けて増収増益、年約70店舗を増やす。
家事代行サービス、アクションパワー(名古屋市)社長の大津たまみ(42)は離婚後、幼い息子を抱え仕事を探したが見つからず「働く場をつくるしかない」と06年に起業した。家事も仕事もと働き過ぎで倒れた経験から、家事を減らす「主婦が欲しいサービス」を徹底する。PTAの会合への代理出席や片付け……と手を広げ、5カ所に加盟店を持つまでになった。
製造業からサービス業への産業構造の変化は、女性の活躍の場を広げる。日本総合研究所副理事長の湯元健治は「医療・福祉はじめ日本のサービス産業を伸ばすには、さらなる女性の力が欠かせない」という。後戻りできない流れにいかに乗るかが、会社の成長を分ける。(敬称略)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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