■性別分けは「インド・ヨーロッパ祖語」から
女性名詞 | 男性名詞 | ||
---|---|---|---|
月 | lune | 太陽 | soleil |
大地 | terre | 空 | ciel |
テーブル | table | 机 | bureau |
車 | voiture | タクシー | taxi |
帯 | obi | 柔道 | judo |
遠い昔と書いたのは、ヨーロッパの言語は「インド・ヨーロッパ祖語」というものを起源にしているという研究があるからだ。
太古、インドやロシア南部から中東、ヨーロッパ大陸にかけて、そこに住む人々が話したとされるインド・ヨーロッパ祖語。それがラテン語やゲルマン語などに分かれ、さらにはフランス語やドイツ語、英語などにつながっていったと考えられている。
インド・ヨーロッパ祖語の時代から名詞に女性、男性の区別があったとされており、その分け方には諸説あるが、1つはもともとの性別に従ったというものだ。つまり、父という名詞は男性、母は女性名詞といったぐあいだ。
また、そのモノや自然現象などが女性的か男性的かで分けたという説もある。この場合は、そこで暮らす集団ごとに感覚が違うから、同じモノでも性別は異なることになる。例えば、水はフランス語では女性名詞だが、ドイツ語では中性名詞。英語では「彼女」という代名詞で受ける船は、フランス語では男性名詞、ドイツ語では中性名詞だ。
■性別なくす流れ ハリケーンも“男女同権”に
太古からの言葉が、どんな決まりで女性、男性に分けられたかはよくわかっていないが、新しい言葉(新語)は誰が性別を決めているのか。
フランスでは外来語については自然と男性名詞とされるケースが多く、フランス、ドイツともIT(情報技術)関連の新語は多くが男性名詞扱いになっているという。
ただ、最近は名詞の性別をなくしていこうという流れがある。ドイツでは新しい言葉は中性名詞扱いにすることも多くなってきているそうだ。
こうした流れから、姉妹都市提携についても、友好都市や親善都市といった表現にするケースがある。
さて、夏から秋にかけてカリブ海などで発生するハリケーン。女性の名前が付くことはよく知られているが、これは女性名詞とは関係ない。第2次大戦のころ、熱帯低気圧に向けて調査飛行に臨んだ米海軍や空軍の隊員が、自分の妻や恋人の名前を付けたことに由来する。現在の命名者は米国立ハリケーンセンターで、実は1979年からは男女同権という観点から男性名も交互に付けるようになっている。大きな被害をもたらした2005年のカトリーナ、12年のサンディなどの記憶が強いので、いまだに女性名だけと思われがちだが、ここでも性別はなくなっている。
(川鍋直彦)