7月に入り、本格的な夏山シーズンを迎えた。世界文化遺産登録が決まった富士山は、山頂をめざす登山客でにぎわうが、山梨県富士吉田市によると、ふもとから5合目までの登山道にも見どころは多いという。登録決定前の5月下旬には、同市と姉妹都市協定を結ぶ米コロラドスプリングズ市の学生らが5合目まで登り、歴史の道を楽しんだ。ところで、この「姉妹都市」という言葉、なぜ兄弟都市とは言わないのだろう。調べてみると、外国語特有の名詞の「性別」に行きあたった。
■命名はアイゼンハワー大統領
学校同士の関係では、姉妹校だけでなく兄弟校という呼び方もある。都市についても兄弟都市という言い方が全くないわけではないが、広く使われているのは姉妹都市だ。
この姉妹都市という言葉、どのようにして生まれたのか。
よく知られているのが、アイゼンハワー米大統領が1956年に提唱した「市民と市民のプログラム」だ。第2次大戦で荒廃した欧州を元気づけるため、国境を越えた市民同士の交流を盛んにして相互理解を進めようと呼びかけた。このとき用いた言葉が「姉妹都市」提携で、英語でシスターシティー(sister cities)とあった。
■仏語・独語で町は女性名詞
なぜ、ブラザーではなく、シスターだったのか。広くいわれている説は、シティーという英単語が「女性名詞」の流れをくむのでシスターを当てたというものだ。
ヨーロッパの言語、フランス語やイタリア語などには文法上、名詞に女性、男性の区別がある。ドイツ語にはさらに中性名詞が加わる。名詞の性が違うと、それに付く冠詞が異なる。例えば、フランス語で太陽は男性名詞なので「le soleil」となるが、月は女性名詞なので「la lune」となる。英語の名詞は女性、男性の区別がほとんどなくなっているが、もともとは同じヨーロッパに起源をもつ言語で名残はあると考えられている。
中学校の英語の授業で、船(ship)を代名詞にするときは、「彼女(she)」で言い換えるようにと教わった人は多いだろう。国も「彼女」で受けることが多かった。
フランス語やドイツ語では町は女性名詞。英語でもシティーは女性名詞だったことが遠い昔にあったのかもしれない。