■日本での起源、英国海軍教官が余暇として伝える
「サッカー」という呼び方は「Association Football」を短縮したものだ。
1863年、英国でそれまでバラバラだったフットボールのルールを共通化して協会(Association)が設立され、協会の定めたルールに基づくフットボールを「Association Football」(アソシエーション・フットボール)と呼ぶようになった。そして、Associationを短縮した「soc」に人を表す「er」をつけた造語ができ「Soccer」(サッカー)と呼ぶようになったという。
日本サッカー協会によると、1873年に英国海軍の教官らが海軍軍人の余暇として伝えたのが日本におけるサッカーの始まりとされる。
当時は「アソシエーション・フットボール」と呼ばれていたとみられ、東京大学(1918年創部)や早稲田大学(24年創部)など一部の伝統校のサッカー部は、現在でも部の名称を「ア式蹴球部」と呼んでいる。
日本で「フットボール」よりも「サッカー」という呼び名が定着した理由について、日本サッカー協会は「正確なことはわからない」としながらも、日本に「アソシエーション・フットボール」として伝わったことが影響しているのではないか、とみる。
■他のフットボール競技と区別
「サッカー」が広まったもう一つの理由として考えられるのが、ほぼ同時期に伝わった、他の「フットボール」との区別だ。
「アソシエーション・フットボール」とほぼ同じ時期に「アメリカンフットボール」や「ラグビーフットボール」も伝わり、「フットボール」だけでは複数の競技と混同されかねない状況があった。早稲田大のサッカー部は「ア式蹴球部」だが、34年設立のアメフト部は「米式蹴球部」。同じ「蹴球=フットボール」でも異なる競技があり、それを区別しなければならなかったことがわかる。
他の国を見ても、「サッカー」という呼び方が主流なのは、サッカー以外の人気スポーツとしてアメフトがある米国や「オージーフットボール」のあるオーストラリアなど。「フットボール」よりも「サッカー」という呼び方が定着したのは、他の様々な「フットボール」と区別しやすかったからではないかと推理できる。戦後「サッカー」という呼び方が普及した背景として、米国の影響を強く受けるようになったことを指摘する見方もある。