直後に各紙で使用例

1面紙面に躍る「五輪」の見出し(1936年10月4日付中外商業新報夕刊)

日本経済新聞(当時は前身の中外商業新報)では、オリンピックマークの意匠登録を巡る記事で36年8月20日に「五輪模様」、翌21日には「五輪模様」に「オリンピックマーク」というルビをつけた見出しになっています。また、10月4日の紙面では代表選手の帰国にあたり「五輪代表本部隊」という見出しもあり、読売新聞で「五輪」が使われてからそれほど間をおかずに使い始めました。

ちなみに直前の東京招致決定(36年8月1日付)を巡る記事、8月のベルリン五輪期間中には、「オリンピック」の文字だけ見出しの活字を少し小さめにしたり、2行にしたりと様々なパターンで工夫をしていたケースもありました。朝日新聞でも36年8月15日付で「五輪景気」という見出しが早くも登場。オリンピックの見出し表記は多かれ少なかれ各社共通の悩みだったと思われ、簡潔な訳語の誕生は大いに歓迎されたようです。

文字数減で表記定着?

倶楽部(クラブ)、型録(カタログ)、冗句(ジョーク)など、外来語に音と字義をうまく組み合わせた漢字の当て字は古くから見られますが、五輪の場合、文字数の大幅な短縮も表記定着の一因に挙げられるのではないでしょうか。もちろん五輪旗からきているため、イメージとして伝わりやすかったということもあるでしょう。

少ない文字数で簡潔に記事の内容を表す必要がある新聞の見出し。長い固有名詞が整理記者泣かせなのは今も昔も変わらないようです。それをいかに分かりやすく伝えるかという試行錯誤の結果、当て字が生まれたともいえます。五輪ほど定着率のよい当て字の「発明」は難しそうですが、今はなじみのない当て字でも数年後には当たり前ということもあるかもしれません。

(工藤綾乃)

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