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ものもらいを「ばか」と呼んだら宮城県出身

2014/1/22

昨年、学生時代の友人と旅行したときのこと。朝、目をこすりながら起床したら、右目の開き具合が悪い。洗面所で鏡に映してみると、ものもらいができていた。私の顔をみた友人は「めぼができてる」。「めぼって何?」と尋ねると、「めぼはめぼじゃけえ」と友人は広島弁に。不思議に思って調べてみると、地方によってものもらいに意外な呼び方があることが分かった。

地方によって様々な呼び方

ものもらいで眼科のお世話になった人も多いのでは…

ものもらいは、まぶたの縁や内側におできのようなものができる疾患。黄色ブドウ球菌などの細菌に感染して起こるもので、医学的には麦粒腫(ばくりゅうしゅ)という。夏場の海水浴、プールなどで感染することが多いが、冬場でも汚れた手で目を強くこすったりするとかかることもあるので清潔を心がけたい。

友人によると、広島ではものもらいのことを「めぼ」、あるいは「めいぼ」と呼ぶことが多いという。「ものもらいという呼び名は知っているが、家族も友だちもめぼだった」と証言した。

この話を北海道で中学・高校時代を過ごした会社の同僚に話したところ、「北海道では、めっぱと呼んでいた」。私は東京都出身。ものもらいという呼び名か、ちょっとなまって「ものむらい」という人もいたが、めぼやめいぼは初耳だった。どうやら、地方によって、呼び方がいろいろあるようだ。

大阪以西に多い「めいぼ」「めばちこ」

まぶたの腫れもの、何と呼ぶ?
めっぱ北海道
ものもらい青森県/岩手県/秋田県/山形県/
福島県/茨城県/栃木県/群馬県/
埼玉県/千葉県/東京都/神奈川県/
山梨県/静岡県/長野県/新潟県/
富山県/島根県/佐賀県/鹿児島県/
沖縄県
ばか宮城県
めもらい石川県/福井県/長崎県/大分県
めんぼ愛知県/岐阜県
めぼ広島県/三重県/香川県
めいぼ滋賀県/京都府/山口県/徳島県/
愛媛県/福岡県/宮崎県
めばちこ大阪府/兵庫県/奈良県/和歌山県/
岡山県
めぼいた鳥取県
めぼう高知県
おひめさん熊本県

(注)ロート製薬が2004年、全国約1万人を対象に調査。表は各都道
  府県で最も多い呼び方

調べてみると、ロート製薬が2004年に、全国約1万人を対象に、まぶたの腫れもの(ものもらい)を何と呼ぶか調べた結果があった。それによると、主に東日本では、ものもらいが多く、大阪以西では「めばちこ」「めいぼ」といった呼び方が多かった。

広島県では「めぼ」という回答が70%で1位だった。三重県、香川県でもめぼが1位だったが、比率はそれぞれ37%、32%だった。三重県では「めんぼ」という呼び方が2位(30%)で、香川県での2位は「めいぼ」で23%なので、ものもらいをめぼと言えば、広島県に縁のある人と思っていいのではないか。

この調査結果の分析をした三重大学の余健・准教授は、ものもらいという呼び名の由来について「東日本を中心に、よその家に行って、ものをもらうと治る、といった言い伝えがあり、それによっているのではないか」と解説する。

大阪以西に多い、めばちこの語源については諸説あるとしており、1つは「め(目)+はち+こ(接尾辞)」という形。はちは物をもらうことを意味しているという。

もう1つは、腫れものが気になって目をぱちぱちさせることからきているのではないかという。

めいぼに関しては、「め(目)+いぼ」からきており、めいぼが他の地域に伝わっていく過程で、「めんぼ」や「めぼ」に変化したとみている。

佐賀県では「おきゃくさん」も

特徴的だったのは、宮城県での呼び名の「ばか」と、熊本県の「おひめさん」だ。宮城県では「ばか」という回答が60%だった。熊本県の「おひめさん」は49%とやや少ないが、2位が「おひめさま」で18%あり、合わせると67%になる。

余准教授は「一見するとまったく逆のイメージを持つ語のように思われるが、自分から遠ざけたい対象に対する表現としては表裏一体と言える」としている。佐賀県では「おきゃくさん」という呼び方もある。

旅行から戻って、家の近所のドラッグストアに行った。男性の店員に「めばちこ、いや、ものもらいに効く目薬は」とたずねたら、「めっぱですね」と返されて驚いた。聞けば、北海道の出身なんだそうだ。

(川鍋直彦)

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