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「紅葉」と書いてなぜ「もみじ」? ベニバナと意外な関係

2012/11/20

秋の行楽シーズン。すがすがしい気候に誘われて家族で紅葉狩り、という人も多いのではないでしょうか。美しい紅葉に目を奪われているときに、子どもがぽつり。「お父さん、『紅葉狩り』っていうくらいなんだから、イチゴやブドウみたいにモミジを持って帰るの?」。さて、あなたならどう答えますか? 今回は紅葉狩りに持っていきたい、ことばの豆知識を紹介します。

■採集しないのに「紅葉狩り」?

厳しい残暑だった今年の9月、北アルプスで見られたはしりの紅葉。山に秋の訪れを告げていた

冒頭の問い、実は数年前の筆者の実話。そのときは正直なところ、明快に答えることができませんでした。「もみじ」なんて当たり前の言葉過ぎて、辞書を引いたこともなかったからです。「どんなにキレイでも木を折っちゃいけないよね。落ち葉なら持って帰れるかもしれないけど、汚れてしまうから無理しなくていいんじゃない?」と、その場はお茶を濁しました。

「紅葉狩り」を辞書で引いてみれば、答えはなんのことはない。広辞苑(第6版、岩波書店)によれば、「山野に紅葉をたずねて楽しむこと。観葉」とあり、新明解国語辞典(第7版、三省堂)には「見て楽しむこと」とはっきり書いてあります。必ずしも「狩猟・採集する」わけではないのです。

「狩り」の元来の意味は、野山で獣や鳥を追い立てて捕らえること。そのうち、植物もその対象に含むようになり、「いさり(漁り)」という言葉があるはずの魚介へも広がりました。さらには、山野などに分け入っていく行為自体を指すようになったようです。風流を競い合った平安貴族たちが、野山に分け入って桜や紅葉を探し求めるさまは、さながら「狩り」の趣なのでしょう。大阪府の枚方・交野両市に広がる丘陵はかつて「交野が原」と呼ばれ、平安時代には鷹狩りの地であると同時に、春には「桜狩り」が盛んに行われていたといいます。

■ベニバナで染色、「赤葉」でなく「紅葉」

紅葉狩りの疑問は解消しましたが、次の疑問が浮かんできました。そもそも「紅葉」と書いて「もみじ」と読むのは無理がないか? 何か語源があるはずだと、辞典で「もみじ」を引いてみました。 

語釈は割愛しますが、「もみじ」という言葉は「草木の葉が赤、または黄色くなる」という意味の動詞「もみず」(紅葉ず、文語ではもみづ)に由来するそうです。その連用形「もみじ」が、葉の色が変わることや、紅葉そのものを指す名詞へと変化したのです。

では「もみず」の語源は何でしょうか? 有力な説は、染め物の「揉み出づ(もみいづ)」のようです。紅花染めにはベニバナの花びらを使います。この花びらには紅色と黄色の2種類の色素が含まれており、これを真水につけて揉むと、まず水溶性の黄色い色素を「揉み出す」ことができます。次に、アルカリ性の灰汁(あく)に浸して揉むと、鮮やかな紅色を「揉み出せる」のだそうです。紅花染めに由来するのであれば、「赤葉」という漢字ではなく「紅葉」が定着したのも納得がいきます。

■秋の露や霜に葉が洗われて色を変える

少し古いですが、明治期に編さんされた国語辞典の改訂増補版「大言海」(冨山房、1982年)に美しい説明があります。

「色ハ揉ミテ出スモノ、又、揉ミ出ヅルモノ、サレバ、露、霜ノタメニモミイダサルルナリ」

昔の人は、露や霜に洗われた草木の葉から、鮮やかな紅や黄色が揉み出されて葉の色が変わると考えたという語釈です。ひんやりとした朝の空気、秋が深まる山々の情景が思い起こされます。

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