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インフルエンザは「かかる」、風邪はなぜ「ひく」?

2013/1/15

 寒い日が続くこの時期、インフルエンザの予防にとマスクを着けていると逆に「かぜをひいたの?」と聞かれることが多い。テレビでは「かぜをひいたら○○」といった、かぜ薬のCMの回数が増える。私たちにとって「かぜ」はとても身近な病気だ。そこでふと思ったのが、なぜ「かぜに罹(かか)る」と言わずに、「かぜをひく」なのか。語源を調べてみた。

■ひくのは風が運ぶ「邪気」

インフルエンザとかぜ、症状は似ているが…

 国語辞典でかぜの項を引いてみると、「主にウイルスによって鼻・のど・気管などがおかされる炎症性疾患の総称。せき・くしゃみ・鼻水・鼻づまり・発熱・頭痛などの症状があらわれる。感冒」(明鏡国語辞典第2版・大修館書店)とあった。ひとくちにかぜといっても症状は様々で、医師の中には、かぜというのは病名ではないという人もいる。

 かぜの語源を日本語源大辞典(小学館)で調べると、吹く風と同じだった。それによると、古代中国で風は大気の動きであるとともに、人の肉体に何らかの影響を与える原因としても考えられていたという。このことから吹く風が運んでくる「邪気」を体の中に引き込んでしまうと、かぜという病になると考えられた。だから、「かぜをひく」というわけだ。

■病としての意味は平安時代から

古典文学に登場する「かぜ」の用例
吹く風の意味で使われている例
古事記(712年)狭井(さゐ)河よ 雲たちわたり うねひやま 木の葉さやぎぬ かぜ吹かむとす
万葉集(8世紀後半)わがやどの いささ群竹(むらたけ) 吹く風の 音のかそけき この夕かも
病気のかぜの意味で使われている例
竹取物語(9世紀後半~10世紀初め)かぜいと重き人にて、腹いとふくれ、こなたかなたの目には、すももをふたつ付けたるやうなり
宇津保物語(10世紀後半)「かぜひき給てん」とてさわぎ、伏せたてまつり給つ

 「ひく」という言葉を使う理由は分かった。だが、もともと吹く風を意味した言葉が、日本でいつごろから病としても使われるようになったのか。

 8世紀後半の万葉集には吹く風としての用例がみられる。

 「わがやどの いささ群竹(むらたけ) 吹く風の 音のかそけき この夕かも」(大伴家持)

 病の意味でも使われるようになったのは平安時代。このころに中国からの移入があったのではないかという説が有力だ。

 竹取物語にはこんな場面がある。

 「からうじて起き上がり給へるを見れば、かぜいと重きひとにて、腹いとふくれ、こなたかなたの目には、すももをふたつ付けたるやうなり」

 かぜが病気として登場する箇所だ。これをみると、当時のかぜは、せきや寒気といった症状だけでなく、下痢、腹痛などの腹部症状、麻痺やてんかん発作などの神経症状まで含んでいたことがうかがえる。

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