2013/8/14

湯帷子の「湯もじ」は伝わらず

浴衣姿で祭りを楽しむ女性

今に伝わる女房言葉はほかにもあるが、言葉以外に、その風習が伝わるものもある。夏の時季なら、浴衣だろう。

浴衣は、湯帷子(ゆかたびら)を略した言い方で、帷子とは麻の薄い着物のこと。室町時代、貴族が風呂に入るときに着用した。当時の風呂は湯船ではなく、サウナのような蒸し風呂。腰かけた際にやけどをしないよう薄い着物をまとって入った。この湯帷子を女官らは「湯もじ」と呼んでいた。

湯もじは入浴用のため、夏に限らず着用されたが、江戸時代に木綿が普及するようになると、主に銭湯で用いられるようになった。さらに色や柄が増えると、夏の外出着としても利用されるようになった。

湯もじという言葉は他の女房言葉に比べて広く伝わらなかったが、街中でおおっぴらに着られるようになったことで、えん曲表現は必要なくなったのかもしれない。筆者には浴衣という呼び名が、湯あがりに肩に引っ掛ける感じをよく表しているような気がする。

(川鍋直彦)