歴史の古さでも横網に軍配

名古屋場所で史上3位となる26度目の優勝を遂げた横綱白鵬

横網という地名が1684~88年まで遡るのは先述の通り。それでは横綱の起源は? 日本相撲協会が初代横綱と認定する明石志賀之助は、より以前の寛永年間(1624~1644年)に活躍したとされる。ただ明石は実在したかどうかが疑わしく、架空の人物というのが通説だ。近年、実在をにおわせる史料も見つかったが、仮に実在したとしても、実は横網のほうがより古いという点には影響を及ぼさない。なぜならこの時代の力士の最高位は大関で、横綱という地位は存在していなかったからだ。

史実として初めて横綱の語が確認できるのは1789年(寛政元年)。第4代横綱谷風と第5代横綱小野川が「横綱之伝」を免許され、横綱土俵入りを行っている。横網の地名がついた時期より100年近く後の可能性がある。

横綱が最高位であると規則に明文化されたのも1909年(明治42年)になってのこと。ちなみに大関の由来は「大関取(大いなる関取)」と字面からも分かりやすい。横綱はというと、土俵入りの際に化粧まわしの上から締める白い麻で編んだしめ縄の綱を「横綱」と呼んだためだという。

マイナスイメージの例外、横綱

横の字といえば「横意地を張る」「横紙破り」「横車を押す」「横やりを入れる」「横恋慕」など、とかくイメージが悪い言い回しと結び付きやすい。「オウ」と音読みしたところで「横行」「横死」「横着」「横柄」「横暴」などと傾向はあまり変わらない。辛うじて「力がみなぎりあふれるほど盛ん」という意味の「横溢(おういつ)」がある程度か。

だが横綱という言葉は例外だ。明鏡国語辞典第2版(大修館書店)も「同類の中で最も優れたもの」「歌謡界の横綱」という意味・用例を載せている。こうしたプラスのイメージと結び付く横綱。相撲の町の地名を巡り綱と網の“綱引き”が今もなお続いていることと、あながち無関係ではないのかもしれない。(中川淳一)

注目記事