ライフコラム

ことばオンライン

男女関係の「ふる」「ふられる」 何をふるの?

2013/2/12

14日はバレンタインデー。秘めた思いをチョコレートに託し、意を決して愛の告白をする女性もいれば、残念ながら思いを受け取れないと断る男性もおり、一年で最も「ふった」「ふられた」をめぐる人間模様が繰り広げられる日かもしれない。そもそも、このふる・ふられるという言葉、いったい何をふるのだろうか。ヒントは、はるか昔、万葉集に登場する「モテ女(じょ)」の有名な歌にあった。

■「ふる」の用例、江戸時代前半から

江戸時代の文書に登場する男女間の「ふる」の例
仮名草子・ぬれぼとけ(1671年)
「『ふるといふは、何としたる事なるや』よしの答へて、『買手の人、気に入らざれば、顔を脇へふるゆへ、其心取りて』」
評判記・色道大鏡(1678年)
「ふる ふり心なり、我すかぬ男にあひて、気のふるといふ儀なり」
浮世草子・好色一代男(1682年)
「我江戸にてはじめの高雄に三十五までふられ、其後も首尾せず、今おもへば惜ひ事哉」

(日本国語大辞典から抜粋)

「ふる」という言葉が、男女の間で相手の好意を拒絶する、という意味ではっきりと使われたのはいつごろからか。日本で最大規模の国語辞典で、言葉にまつわる過去の用例を多く紹介している日本国語大辞典(小学館)をめくると、江戸時代前期、17世紀後半ごろの書物を中心にいくつか記述がある。たとえば、自由気ままに色好みの道を究めた男の人生を描いた「好色一代男」(井原西鶴・1682年)では、主人公が高級遊女に35回もふられた、と記している。

同辞典によると「嫌って相手にしないようにする。特に男女の間で冷淡にする。遊女が客の意に従わない」というのが、男女間の「ふる」についての解説だ。さらに、こんな注釈もついている。振るという動詞の意味として同辞典が最初に載せている「物の一端を持って、何度もはやく動かす。全体を前後左右に数回、すばやく動かす」動作からきているというのだ。

■「振り落とす」だけではなく、袖にも由来?

ふる・ふられる、の語源は、この振る動作から派生して、相手の思いを振り落とすような感じの意味で使うようになったと考えるのが自然だが、どうやらそれだけではなさそうだと思わせる古い資料がある。

江戸時代から大正時代にかけて、今の東京で使われていた当時の通用語をまとめて1917年に発行した小冊子「東京語辞典」(新潮社)では、こんな解釈をつけている。

ふ・る(振) 男女の痴情にいう。芸娼妓などが客の意に従わぬこと。冷ややかにもてなすこと。嫌って袖を振るとの意。

この小冊子は、当時の書家・俳人の小峰大羽氏が編集したもので、たとえば「ふとっちょ」を「よくふとりたる婦人を指していう語」と称するなど、堅い言葉だけでなく、人々が生活の中で使っていた俗語も多数収めている。ふるについて言えば、当時は異性の求愛を断るときには、着物の袖を振っていたということになるようだ。

ライフコラム 新着記事

ALL CHANNEL