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少年ジャンプで浸透? 「奇特な人=変なやつ」という間違い

2012/7/10

「奇特な人」の「奇特」ってどんな意味――。正しくは「匿名で多額の寄付をするなんて、今どき奇特な人もいるものだ」など他人の行為や心がけが「優れて他と違って感心なこと」で、「殊勝」の類義語とされます。2002年の文化庁「国語に関する世論調査」では本来の意味を理解していた人は半数に届かず、4分の1超が「奇妙で珍しいこと」と誤った解釈をしていました。調査から10年近くが経過し、こうした傾向はさらに強まっていると推測されます。明鏡国語辞典第2版(大修館書店、10年)が「近年、『こんなものを買うなんて奇特なやつだ』など、風変わりの意味でも使われるが、誤り」という注釈を追加。誤用が浸透しつつある背景を探ると、「日本一」といわれた読者投稿欄の存在が浮かび上がってきました。

■若い世代ほど意味を誤解

文化庁の調査から指摘できるのは、若い世代ほど意味を誤解している割合が高い点。とりわけ10代(16~19歳)と20代で誤った解釈をした回答が多数派になっています。この世代の若年時、最も影響力を持った漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)との関連が一因として挙げられるのではないでしょうか。1994年末の653万部という発行部数は世界一の記録。調査時の02年に16~29歳だった世代は当時10歳前後~20歳前後ですから、まさに主力購読層に当てはまります。

そんなジャンプ黄金時代を、数々の漫画に交じって支えた読者投稿欄こそが「ジャンプ放送局」です。82年から95年まで続き、読者投稿を集めたものとしては当時最長となる24巻まで単行本も発行されました。最盛期で毎週4万通というはがきの数も桁違い。その中で草創期を除き常に人気ナンバーワンだったコーナーが「奇特人間大賞」。一口に言えば「身近にいる変なやつ大集合」というコンセプトで、このコーナーが与えたインパクトがあまりにも強かったのではないか、というわけです(表参照)。

■「小さな親切大きなお世話」で始まった

文化庁の調査結果発表から程なくして、読売新聞は03年7月3日付コラムで「少年漫画雑誌に、以前、『奇特人間大賞』という投稿欄があった。身の回りの人のおかしな言動を寄せるもので、誤用に基づいた命名だった」と掲載。奇特の誤用と奇特人間大賞との関係について示唆していましたが、「誤用に基づいた命名」という点は事実誤認でした。そもそも奇特人間大賞は正しい意味に基づいて命名されたコーナーだったからです。

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