実は不利? 目的別に保険でお金を準備保険コンサルタント 後田亨

この連載では一般のお客様との対話を通して「実は間違っている保険の常識」を考えます。今回は「老後資金、進学資金などと、テーマを設定してお金を用意することの善しあし」について考えます。相談に来られた会社員の男性Dさん(45)との会話です。

後田(以下U):「Dさん、学資保険には加入なさっていますか?」

Dさん(以下D):「はい、子供が生まれたときにすぐに入りました」

U:「個人年金保険はどうですか?」

D:「今まさに検討しているところです」

U:「進学資金の次は老後資金の準備というわけですね」

D:「そのとおりです」

U:「2つの保険の共通点は何だと思いますか?」

D:「銀行預金よりはお金がたまるということでしょうかね」

U:「残念(笑)。貯蓄性があるとされる他の保険も同じですが、共通点は『元本割れ期間があること』です。個人年金保険の場合、営業の人から『契約当初は元本割れ期間があるものの、やがて払戻金の額が払込保険料総額を上回り、長期的には預金よりお金が増えます』といった説明があったかと思います」

D:「そんな感じの説明がありましたね」

U:「私も営業マンだった頃、同じ説明をしていました(苦笑)。でも、近年になって、すごく不思議に思うことがあるんです」

D:「何が不思議なんですか?」

U:「学資保険でも数年間、さらに個人年金保険に30代で加入する場合は20年くらい、元本割れが続くこともあるわけです。素朴に『数年から10年超もの間、マイナスが続く仕組みが、貯蓄に有利なわけがないだろう』って思いませんか?」

D:「そう言われればそうですね。正直、あまり気にしていなかったですけど」

U:「なぜ元本割れの期間が長いのかと考えると、保険は契約した年度に営業担当者や代理店に支払われる手数料が高いからだと思うんです。銀行の窓口で働いている知人が『投資信託とは手数料率のケタが違う』と驚いていましたから。最近、銀行の窓口で販売されている一部の保険で手数料が開示される方向だというニュースが報じられたのはご存じですか?」

D:「いや、知らないです」

U:「まだ、一部の業界関係者で盛り上がっているだけなんでしょうね(苦笑)。でも、手数料は決定的といってもいいかもしれないポイントです」

D:「そうなんですか……」

U:「言うまでもなく、お客さんが支払う保険料から引かれた手数料は、代理店などの口座に振り込まれます。そして二度とお客さんのところにも保険会社にも戻ってくることはないわけです」

D:「それはそうだ」

U:「そうであれば、保険会社が魔法のようなお金の増やし方でも知らない限り、手数料が高い保険ほど貯蓄には不利だと考えられませんか。元手が30%減った状態と3%減った状態から積み立てが始まるのであれば、前者が断然不利に違いない、と思えるでしょう」

D:「確かにそうですね。今までそんなふうに考えてみたことがなかったです」

U:「結局、進学資金を準備するとか、老後資金をためるとか、テーマのようなものを設定することで視野が狭くなっているのではないかと思うんです。進学資金ということで考えると、どうしても17年後や18年後のお金に目がいく。老後資金の場合は、60歳時以降の払戻金額と保険料の総額の差が気になる。その結果、『そもそも大きなマイナスから積み立てをすることになる』という疑問が生じにくくなるのではないでしょうか」

D:「そうかもしれないですね。でも『要は満期まで待てばいいんだ。最終的には預金より有利でしょ?』とも感じますよ」

U:「そうでしょうね。いま、おっしゃった『満期まで』『最終的には』という言葉も実は重要なキーワードなんです。次回、お話ししますね」

後田 亨(うしろだ・とおる) 大手生命保険会社や乗り合い代理店を経て2012年に独立。現在はバトン「保険相談室」代表理事として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。著書に「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)や「がん保険を疑え!」(ダイヤモンド社)、「保険会社が知られたくない生保の話」「保険外交員も実は知らない生保の話」(日本経済新聞出版社)など。公式サイトはhttp://www.seihosoudan.com/とhttp://www.yokohama-baton.com/

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