4月14日、16日と大規模な地震が発生した熊本市では、多く住宅が被害を受けています。報道を見る限りでは特に古い木造住宅の倒壊が多いように思えます。
ところで、「新耐震基準の建物は地震に強い」という話がよく聞かれます。新耐震基準の建物というのは、1981年6月1日に施行された建築基準法改正にのっとった建物(正確には81年6月1日以降に建築確認申請を行った建物)のことで、震度6強から震度7の揺れでも建物が倒壊せず、最低でも「人の命が守られる」水準の建物と定義されています。
建物の耐震性が重要なのは当然ですが、実は、建物自体だけでなく、建物が建っている「地盤」が地震による建物の破損や倒壊に大きく影響するということをご存じの方は少ないのではないでしょうか。
一般に、建物が倒壊する可能性が高いか低いかについては、以下のような関係があるといわれています。
◇「地盤が良い」+「耐震性が高い」→ 倒壊リスク低
◇「地盤が悪い」+「耐震性が低い」→ 倒壊リスク高
地盤のよしあしとは、地盤が硬いか軟らかいかということです。地盤が軟らかいと地震の揺れが増幅するため、建物倒壊リスクが高まります。まな板の上に豆腐を載せ、その上に建物が載っていると想像してみてください。まな板を揺らすと、豆腐はさらに大きく揺れますよね。
ところが地盤が硬いのか軟らかいのかについては、地盤調査をしないとその状態がわかりません。
マンションの場合は、杭(くい)を硬い支持層まで打たなければならないことから、ボーリング調査を行っているはずなので、設計図書に記載されている「土地柱状図」を見れば地盤の状況が確認できます。
また、2000年以降の新築一戸建ては建築前に地盤調査を行い、地盤が悪ければ地盤改良をしなければならない決まりになっていますので、地盤調査報告書や地盤改良工事に関する資料があるはずです。
問題なのは00年以前に建築された戸建て住宅です。地盤に関する情報はほとんどないといっていいでしょう。そのような場合、地盤調査ほどの精度はないにせよ、地盤についてある程度の推測ができる便利なサイトがいくつかありますのでご紹介します。
まずご紹介したいのは、国土地理院の「土地条件図」です。土地の成り立ちを示した地図で、地盤の良しあしを推測することができます。例えばオレンジ色に塗られた「台地」ならば地盤がよく、台地に挟まれた谷や川沿いの低地にある「盛土地」(赤い斜めの破線)は地盤が緩いとか、低地の中にある「微高地」(黄色い部分)は、自然堤防や砂州で比較的地盤がよいとされています。
同じ国土地理院の地図の中には「都市圏活断層図」があり、活断層の位置なども確認することができます。活断層は赤い線で示されており、活断層の位置だけでなく、断層面が横ずれなのか縦ずれなのか、またはたわんでいる部分なのかといったこともわかるようになっています。この地図は活断層の位置だけでなく、地盤の硬い台地(赤系色)や地盤の軟らかい沖積低地(青系色)などの区分も色分けされています。
活断層についてもう少し詳しく知りたい方は、国立研究開発法人産業技術総合研究所の「活断層データベース」も利用されるとよいと思います。
「土地条件図」は読みなれないと少々難しいのですが、東京都が13年9月に公表した「地震に関する地域危険度測定調査(第7回)」という調査報告は比較的わかりやすい地盤データとなっています。東京都内の各町を丁目単位で地盤分類を明示しているだけでなく、その地域に建っている建物の構造や建築年代などから、建物倒壊危険度や火災危険度などを数値化して開示していますので参考になります。
東京都以外の方でしたら都道府県別で「ゆれやすさマップ」というものが内閣府から提供されています。これも地盤の良しあしによって揺れやすさを表した地図です。
このほか古地図などを確認することで、かつての土地利用形態や土地の形状などがわかる場合があります。首都圏だけですが、「歴史的農業環境閲覧システム」は明治初期から中期にかけて作られた簡易な地図と現在の地図を左右で比較できる「比較地図」を閲覧できますので、かつて河川や田だったところが宅地になっているような立地も簡単に確認することができます。
こうした場所は、もともと地盤が緩く、土を盛っているはずですから、地震の揺れは増幅される可能性がありそうだと推定できることになります。
もし、地盤が軟らかい場所に旧耐震基準の建物が建っているのであれば、地震によって建物が大きく破損・倒壊するリスクが比較的高いと考えられます。そのような場合は、無料の耐震診断や耐震工事補助金を用意している自治体もありますので、相談してみるとよいでしょう。
