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相続トラブル百科

将来の相続トラブル 実は今そこにある危機 司法書士 川原田慶太

2016/4/22

 人の死のタイミングは、必ずしも予測できるものではありません。その意味では、相続はある日突然、襲ってくるものでしょう。しかし、そこに至るまでの家族や親族の関係性は、きのうやきょう築かれるわけではありません。

 相続トラブルのなかには、法律や制度の硬直性が原因となって起こるものがあり、これは自分ではコントロールできません。実は現行の相続に関する法律の骨子は30年以上も前になった1980年の改正前後から大きな変化がありません(近年大きなニュースになった非嫡出子に関する法改正も、もともとはこの時代からあった試案の一つがようやく実現したものです)。

 時代は急速に変化し、十人十色、各人が固有のライフスタイルを選ぶようになりました。「おひとりさま」の増加、晩婚化、非婚化、少子化、高齢化、性別を超えたパートナーシップのあり方――。相続の法律は世の中の変化の波に対応できるようにはなっていません。その意味では、制度が時代に追い付いていないという側面もあります。

 しかし、それはあくまで外部環境の問題です。そういった大上段の話とは別に、後々、相続トラブルの真因になりかねない「芽」をいまから注意して、刈り取っておくこともできます。例えば、家族や親族のあいだの日々の細かなコミュニケーションの積み重ねです。

 実際に相続トラブルが起きている家庭をみて、つくづく思うことがあります。相続の発生というのはあくまで「きっかけ」にすぎないということです。多くの場合、もっと以前から家族関係にきしみが生じており、家族のコミュニケーションが破綻しているのです。

 とうの昔にすでに壊れていたものが、相続発生によって改めてスポットライトが当り、「壊れている」ことがよりハッキリしたともいえるでしょう。遺産分けのもっと以前から始まっていた家族のズレが原因となっているのです。

 家族同士なので気を使わなくていい、体裁を気にしなくていいというのは長所のひとつではあります。だからといって、お互いにまったく相手に対する敬意や思いやりがない後ろ向きな言葉を交わしていると、関係がどんどん壊れていきます。それが相続のタイミングで一気に明るみに出るのです。

 きょうがあすをつくるのであり、いまこの瞬間にもお互いに交わす何気ない言葉や態度のひとつひとつが重要なのです。いま何を選択するかによって、将来の関係性を良い方向にも、その逆にも変えて行く可能性があります。コミュニケーション積み重ねをもう少し意識して、少しずつでも親族間の関係をポジティブなものにしていこうとする地道な努力こそ、結局は相続トラブル回避への一番の近道となるのではないかとも思います。

川原田慶太(かわらだ・けいた) 2001年3月に京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験に合格し、02年10月「かわらだ司法書士事務所」を開設。05年5月から「司法書士法人おおさか法務事務所」代表社員。司法書士・宅地建物取引主任者として資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数務める。

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