マネー研究所

生保損保業界ウオッチ

欠かせぬバイクの任意保険 しかし加入率は4割止まり

日経マネー

2016/5/20

PIXTA
日経マネー

契約はしたものの、細かな内容はよく知らない――。生命保険や損害保険の契約者の中には、こんな人も少なくないだろう。だが、保険は契約条項ひとつで受けられる補償が大きく変わる上、新たなサービスも続々と登場している。本コラムでは、生命保険と損害保険を交互に取り上げ、保険選びの上で知っておきたい知識を解説する。今回は、二輪車の任意保険について見ていこう。

2015年、全国の交通事故死者数(24時間以内)が15年ぶりに前年を上回った。背景には高齢化がある。高齢者(65歳以上)は事故に遭った際の致死率が高く、死亡者の54.6%を占めている。自動車でなく二輪車(バイク)の事故でも重症になりやすい。

同じ損害賠償でも、自動車事故に備える認識は、一定程度浸透しているといえよう。任意とはいえ自動車保険への加入は必須との認識が一般的だ。損害保険料率算出機構によると、2014年3月時点で対人賠償保険の加入率は87.3%に上っている(自動車共済含む)。

だが原動機付き自転車(原付)を除く二輪車のみでは、加入率は41%に急落する。二輪車であろうと重大事故を引き起こす可能性は十分にある。そこで自動車保険に加入していなければ、自動車損害賠償責任(自賠責)保険の補償を超えた賠償金は言うまでもなく加害者の自己負担となる。

■自賠責保険未加入は法律違反

自動車保険以前に、原付や二輪車も含む全ての自動車は、自賠責保険に入らず運転することはできない。未加入で運転すれば、自賠法により1年以下の懲役または50万円以下の罰金、自賠責保険証明書を所持していないだけでも30万円以下の罰金に科せられる。未加入での運転は自賠法のみならず道路交通法違反であり、違反点数6点で即免許停止の行政処分を受けることにもなる。

厳しく加入が義務付けられているのは、自賠責保険が被害者救済をその趣旨としているためだ。加入の確実性を高めるため、車検時には自賠責保険の更新も必要としている。車検制度によって、乗用車の自賠責保険が切れていることは通常起きにくい。

だが、二輪車には車検不要のものもある。自動車保険どころか自賠責保険も切れた二輪車が走行している事態も考えられる。

その状態で重大事故に至れば、もはや取り返しがつかない。自賠責保険から支払われるはずの賠償金も含めた全額が加害者の自己負担となる。たとえ自動車保険に加入していても、自賠責保険を切らしていれば加害者には多額の負担が発生する。

自動車保険の補償は自賠責保険の補償上限を超えたところから始まる。よって自賠責保険から支払われる補償部分(死亡3000万円、後遺障害4000万円など)の全額を加害者が負担することになるのだ。

加害者が自賠責保険にすら入っておらず、賠償資力もなければ被害者は救われない。こうした場合、被害者は政府による救済制度「政府保証事業」から、自賠責保険とほぼ同様の補償を受けられる。

これは加害者に甘い話ではない。政府から被害者に支払われた補填金は加害者が負担すべきもの。そのため政府は、加害者への損害賠償請求権を被害者に代わって取得し、加害者に求償(請求)を行うことになる。加害者が応じなれば、政府は加害者を相手に損害賠償請求を裁判所に提訴する。その後は裁判所の判決に従って、加害者の所有する土地やクルマなどの資産、給与などが差し押さえられる。

これほどの可能性を踏まえれば、たとえ二輪でも、自賠責保険はもちろん自動車保険にも加入しない選択肢はないはずだ。

清水香(しみず・かおり)
生活設計塾クルー。学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」委員。

[日経マネー2016年6月号の記事を再構成]

マネー研究所 新着記事

ALL CHANNEL