ライフコラム

一条真也の人生の修め方

熊本地震と日本人の「こころ」 一条真也

2016/4/26

 わたしは九州に住んでいます。このたびの熊本県で始まった地震活動は阿蘇地方や大分県に広がり、被害が拡大しています。熊本で14日夜、益城町でM(マグニチュード)6.5の地震が起きた後、16日未明にM7.3の地震が発生、これは1995年の阪神淡路大震災に匹敵する規模です。震度1以上の地震の回数は新潟県中越地震や阪神淡路大震災をはるかに上回り、史上最多であるともいわれています。

 このたびの地震により、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々の不安や心配や苦悩が少しでも軽減されることを心からお祈りいたします。わたしは2014年6月に冠婚葬祭互助会の全国団体である全国冠婚葬祭互助会連盟(全互連)の会長に就任しましたが、その場所がまさに熊本でしたので、非常に複雑な心境です。今回の被害状況を踏まえ、全互連では人道的な見地に立ち、微力ながら可能な限りの支援を行わせていただくと同時に、一刻も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

 今回の地震でも自然の脅威を嫌というほど思い知らされました。よく、「自然を守ろう」とか「地球にやさしく」などと言います。しかし、それがいかに傲慢な発想であるかがわかります。やさしくするどころか、自然の気まぐれで人間は生きていられるのです。生殺与奪権は人間にではなく、自然の側にあるということです。

 それにしても、今回の地震が阿蘇山の大噴火につながらなくて良かったです。九州のみならず、わたしたちの日本列島は火山列島、地震列島だということを改めて思い知りました。2014年には、長野・岐阜両県にまたがる御嶽山が噴火し、じつに58人の方々が亡くなられました。火山活動としては戦後最多の犠牲者を出すという最悪の惨事になりました。阿蘇山が大噴火すれば、被害は甚大だったでしょう。

 日本人固有の信仰といえば、神道です。神道とは何でしょうか。日本を代表する宗教哲学者にして神道ソングライターであり、また神主でもある鎌田東二氏が、すっきりとした説明をしてくれます。鎌田氏は、著書「神道とは何か」(PHP新書)で次のように述べています。

 「さし昇ってくる朝日に手を合わす。森の主の住む大きな楠にも手を合わす。台風にも火山の噴火にも大地震にも、自然が与える偉大な力を感じとって手を合わす心。どれだけ科学技術が発達したとしても、火山の噴火や地震が起こるのをなくすことはできない。それは地球という、この自然の営みのリズムそのものの発動だからである。その地球の律動の現れに対する深い畏怖の念を、神道も、またあらゆるネイティブな文化も持っている。インディアンはそれをグレート・スピリット、自然の大霊といい、神道ではそれを八百万の神々という」

 「カミ」という名称の語源については、「上」「隠身」「輝霊」「鏡」「火水」「噛み」など古来より諸説があるものの、定説はありません。でも、江戸時代の国学者である本居宣長は大著「古事記伝」で、「世の尋(つね)ならず、すぐれたる徳(こと)のありて、畏(かしこ)きもの」と「カミ」を定義しました。つまり現代の若者風に言えば、「ちょー、すごい!」「すげー、かっこいい!」「めっちゃ、きれい!」「ちょー、ありがたい」「ありえねーくらい、こわい」などの形容詞や副詞で表現される物事への総称が神なのですね。このたびの地震は、日本人にとって「ありえねーくらい、こわい」ものでした。

 このように、神道とは日本人の「こころ」の主柱です。そして、柱は他にも存在します。仏教と儒教です。日本人の「こころ」の三本柱である神道、仏教、儒教が混ざり合っているところが日本人の「こころ」の最大の特徴であると言えるでしょう。それをプロデュースした人物こそ、かの聖徳太子でした。聖徳太子こそは、宗教と政治における大いなる編集者だったのです。儒教によって社会制度の調停をはかり、仏教によって人心の内的平安を実現する。

すなわち心の部分を仏教で、社会の部分を儒教で、そして自然と人間の循環調停を神道が担う。三つの宗教がそれぞれ平和分担するという「和」の宗教国家構想を説いたのです。

 今回の地震でも、日本人は「和」の精神を示しました。被災地では「助け合い」の動きが活発化しています。地元の飲食店は無料で食料を提供し、人々は炊き出しでおにぎりや味噌汁を作り続けました。2011年の東日本大震災で到来したとされる「隣人の時代」の再来です。1995年の阪神淡路大震災のときに、日本に本格的なボランティアが根づきました。あのときが日本における「隣人の時代」の夜明けだったわけです。今また、多くの人々が隣人愛を発揮しています。

 なぜ、人々は隣人愛を発揮するのでしょうか。その答えは簡単です。よく、「人」という字は互いが支えあってできていると言われます。互いが支え合い、助け合うことは、じつは人類の本能なのです。「隣人愛」とは「相互扶助」につながります。わたしの本業である冠婚葬祭互助会のコンセプトです。被災者のために何ができるかを考えたいと思います。

一条真也(いちじょう・しんや)本名・佐久間庸和(さくま・つねかず) 1963年北九州市生まれ。88年早稲田大学政経学部卒、東急エージェンシーを経て、89年、父が経営する冠婚葬祭チェーンのサンレーに入社。2001年から社長。大学卒業時に書いた「ハートフルに遊ぶ」がベストセラーに。「老福論~人は老いるほど豊かになる」「決定版 終活入門~あなたの残りの人生を輝かせるための方策」など著書多数。全国冠婚葬祭互助会連盟会長。九州国際大学客員教授。12年孔子文化賞受賞。

ライフコラム

ALL CHANNEL