自信のあるアイデアをあなたがいつも却下される理由

日経ウーマンオンライン

2016/4/25
PIXTA
PIXTA
日経ウーマンオンライン

先日、とあるメーカーのデザイナーを対象としたプレゼンテーション研修を行う機会がありました。研修の前の打ち合わせの際に資料を見せてもらったところ、グラフィックはとても美しく、コンセプトもすばらしいものばかりでした。コンペでもいつも最終まで残るそうです。しかし、なぜか最終コンペで競合に負けてしまうことが多いのがお悩みとのことだったので、コンペに勝つために、いかにプレゼンをブラッシュアップするかについて話してきました。

事前に資料を拝見して気付いたのが、表現に自信をもっているデザイナーだからこそ陥りがちな「ワナ」でした。それは、プレゼンに「驚き」や「新しさ」を求めてしまうことです。これを私は「びっくり箱プレゼン」と名付けています。クライアントの悩みや、今回提案するデザインにいきついた背景など、プレゼンに至るまでにずっと打ち合わせをすすめてきたプロセスをすっとばし、クライアントに衝撃やワクワク感を与えようと、アイデア勝負に走る、つまり「びっくりさせる」ことが目的になってしまうことが多いからです。

斬新なアイデアがいけないというわけではありません。アイデアに至るまでのプロセスを、相手主体できちんと考えていますよ、という姿勢を見せるひと手間が足りないのがいけないのです。

提出資料を却下される人は、「びっくり箱プレゼン」のワナにはまっている?

「びっくり箱プレゼン」をしているのはデザイナーだけではありません。上司に頼まれて、残業してまで作った資料。このアイデアならきっと上司も認めてくれるはず。ひそかな自信をもって出した資料なのに「こんな資料を作れと言った覚えはない」と却下されたり、「良いんだけどね……」と言われつつも真っ赤になるくらい修正指示がでて落ち込んだりした経験がある人は、「びっくり箱プレゼン」のワナに陥っている可能性があります。

あなたが提案するアイデアが、相手の悩みを解決するものである理由やプロセスをきちんと伝え、「この人たちは私たちのことをしっかりと考えてくれているんだ」と思わせる姿勢をプレゼンや資料に反映させなければ、いままでの打ち合わせは何だったんだと思われてしまいます。あなたのアイデアが結局採用されていないということは、相手の悩みへの理解が足りず、解決策を提示していないということになるのです。

ビジネスの世界ではプロセスではなく結果だ、とよく言われますが、プレゼンの世界では、結果に至るプロセスを明示していくことが大切です。柔らかな心遣いをもって相手をよく観察し、プロセスを丁寧に追って悩みを引き出すことは、特に女性が得意とするところ。プレゼン資料を作るときにも、ぜひ日ごろからの観察力をフル回転させ、その結果を仕事にもしっかり反映させていきましょう。

わかってもらうためには「共感」の後に「論理」で攻める

では、あなたが提案するアイデアが相手の悩みを解決できるということをしっかり伝えるためにはどうすれば良いのでしょうか。

一般的にビジネスコミュニケーションにおいては論理展開が大事だと言われることが多いですが、実は論理の前に必要なのは「共感力」です。ただし、ここで言う「共感力」は、ただ相手の話を聞いて「うんうん、わかるよ」というだけのものではありません。相手の不安・不満・疑問をクリアにすることで、「この人は私のことをわかってくれている」と思ってもらうことが、ここで言う「共感力」です。

いきなり相手の問題点を指摘したり、新しいアイデアを提案したりするのではなく、次のような不安をきちんと明確化し、あなたが不安に思っていることを私はわかっていますと伝えた上で、それらの不安をあなたの提案で解決することができないかを考え、伝えるクセをつけていきましょう。

「驚き」ではなく「共感」で説得する具体例

例えば、あなたが企業の広報担当で、決算発表会の資料作成を任されたとします。決算発表を聞く相手となるアナリストの人たちの興味や不安は、「好調/不調の原因は何か?」「今後どんな対策を考えているのか?」「今後も持続的な成長が可能なのか?」といったものです。ですから、その疑問や不安を明確化したあとに自分のアイデアを出していきましょう。

同じ広報の仕事でも、アナリストではなくマスコミに向けた対応の場合は、マスコミの興味の先は「話題になりそうなネタはないか? 新製品は何か?」かもしれませんし、企業の製品のファンの人に向けた「ファン感謝祭」のようなイベントだとしたら、「新しいワクワクを見せてくれるか? いち早く手に入れたら自慢できるか?」かもしれません。相手にそった期待や不安を最初に示してからアイデアを発信していくことで、わかりやすさは格段に上がります。

例えば、あなたがオフィスデザインを提案する営業部隊のメンバーだとしたら、営業対象のクライアントは、オフィス家具やインテリアを一新することによって「快適さ」「創造性」「チームワーク」が向上することが大切だと思うでしょう。その場合は、相手がいかに「快適さ」「創造性」「チームワーク」を大切にしているかを私たちはよくわかっていますよ、という姿勢を前面に出し、その後で相手の「困った」を解決するために自社製品や自社のインテリアデザインがどう役立つかをプレゼンすればいいわけです。

まずは相手の期待は何かをしっかりと探り、きちんと受け止めるための材料を準備していきましょう。このひと手間を加えるだけで、あなたの主張やアイデアが格段に通りやすくなりますよ。

池田千恵(いけだ ちえ)
株式会社 朝6時 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。外食企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。企業や官公庁、個人に向け、図を活用したプレゼンテーション資料作 成術、企画書作成術や会議進行術など、「伝わる」コミュニケーション全般について指南。女性のキャリア形成、ダイバーシティなどをテーマに講演、著述活動 も行う。『絶対! 伝わる図解』(朝日新聞出版)、『描いて共有! チーム・プレゼン会議術』(日経BP社)などプレゼン・図解に関する著書多数。

[nikkei WOMAN Online 2016年4月15日付記事を再構成]