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ありのままの自分・夫・子どもを認める勇気

日経DUAL

2016/5/13

日経DUAL

皆さん、こんにちは。子育て支援の代表取締役、熊野英一です。アドラー心理学をベースに「自分を<勇気づける>ことの大切さ」と「他者を<勇気づける>ことの素晴らしさ」をお伝えしています。

よかれと思って、長時間残業したり、夫の世話を焼いたり、子どもの面倒を見たり。そのうち自己犠牲に伴うストレスが限度を超えてついに爆発! そんな経験があるかもしれません。

私の著作『アドラー・子育て 親育てシリーズ 第1巻 育自の教科書 ~父母が学べば、子どもは伸びる~』(アルテ刊)でお伝えしている内容を再編して、自己犠牲を伴うことなく、誰かの役に立つことで貢献感・幸福感を感じられることこそが、幸せの本質であることを考えていきたいと思います。

■「空気を読まねばならない」と思うことの功罪

アドラーが言う「幸せの3条件」は次の3つです。

<その1:自己受容>ありのままの自分を認め、自分を信頼できること
<その2:他者信頼>周りの人達(上司・同僚・夫・子など)も信頼できること
<その3:他者貢献>自己犠牲を伴うことなく、他者に貢献できること

「自分を信頼する」って、実はとっても深い意味を持っています。

「自分のことを信頼できているかどうか、よく分からない。自分を信頼する方法が知りたい」

「他者の目、他者からの評価が気になり、自分に自信が持てない」

このような悩みを抱えて、私のところにカウンセリングに来られる方もたくさんいらっしゃいます。そんなとき、私は「同調圧力からの解放」「承認欲求からの卒業」というお話をします。

日本社会に通底している「空気を読まねばならない」「皆と同じでなければならない」という無言の「同調圧力」を強く意識し過ぎると「ホントは私、○○って思っているけど、言わないでおこう」という経験を積み重ねることになります。そして、いつの間にか「自分を信頼できなく」なっていくのです。

一方、こうした社会風土は、相手を気遣う文化や、東日本大震災のときに自然と共有できた「絆(きずな)」の感覚など、日本の良さとも表裏一体の関係にあります。ですから、個人的には「そこそこ、の程度感」が大切だと思っています。

また、フェイスブックなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での「いいね!」の数に一喜一憂するような「他者からの承認を求める」傾向も強まっているように感じます。その結果、「他者から認められる」「他者に褒めてもらう」ことが判断基準になってしまい、本来持っている「自分の中の素直な気持ち」を押し殺してしまうような方も増えているようです。

アドラー心理学が日本で一気にメジャーとなるきっかけをつくったベストセラー『嫌われる勇気』(岸見一郎/古賀史健 ダイヤモンド社)は、まさに現代の日本社会に生きる私達の「他者から嫌われることを極度に恐れていることによる心のモヤモヤ」を言い当てたタイトルだったからこそのヒットだった、ともいえるのではないでしょうか。

■人間は所属感を持てたときに、安心できる

ありのままの自分を認めることができ、自分を信頼できるようになったあなたが、幸せになるために目を向けてみるべき次のポイントは<その2:他者信頼=周りの人達(上司・同僚・夫・子など)も信頼できること>です。

人間は、太古の昔から、DNAレベルで「どこか(誰か)に所属感を持てたときに、安心できる」という感覚を持っているイキモノです。そしてこの所属感・安心感は「ありのままの自分を受け入れてもらったとき」に最大化するのです。

「信頼」と「信用」は似ているようで大きく異なります。信頼は、無条件で相手を信じ受け入れることです。信用は、いつも条件付きで「もしあなたが○○できたら(してくれたら)、私はあなたを受け入れる」というものです。あなたは、愛する家族や、共に働く仲間から、信頼されたいですか、それとも信用されたいですか。

自分が望むものを相手に与えたときにこそ、あなたはそれを手に入れることができます。自分を信頼するために、ありのままの自分を認めたように、上司や同僚、夫や子どもを信頼するために、ありのままの彼らを認める勇気を持ってみませんか。

それでは、最後に【幸せの3条件】の<その3:他者貢献=自己犠牲を伴うことなく、他者に貢献できること>について見ていきましょう。

上司のため、同僚のため、部下のため。顧客のため、取引先のため。夫のため、子どものため……。あなたはついつい、誰かのために、自己を犠牲にしてまで尽くしてしまったことはありませんか。

その結果「私はあなたのために、こんなに我慢して○○しているのに~!」と怒り狂い、相手からは「いや、そこまでやってくれなんて、こっちは頼んでいないけど……」なんて冷静に返されて、さらに逆上して思わず握った拳を振り上げたくなった、なんてことはありませんか。(笑)

■子どもは「自己受容→他者信頼→他者貢献」で自立していく

アドラーは他者のために自己犠牲までする人を「社会に過度に適応した人」と呼び、そうした在り方に警告しました。

・自己を犠牲にすることなく、信頼する相手のために見返りを期待せずに貢献する
・その結果、相手の心からの「ありがとう」「助かったよ」という感謝の言葉をもらう
・不完全な自分でも、誰かの役に立てば、こんなに喜んでもらえるんだと実感できる

こんな経験をしたときに、あなたはきっと幸福感を感じるはずです。

ありのままの自分を受け入れ(自己受容)、信頼する仲間との間に所属感を共有する(他者信頼)。そして、自己犠牲を払うことなく、信頼する仲間のために役に立ち貢献感を得られたとき(他者貢献)、こんな自分でも信頼する仲間のために役立てることを実感し、さらに、自己受容の気持ちが高まる。

こうした好循環のサイクルを感じられる状態が、アドラーが唱える「幸せの3条件」を満たした状態です。

このアドラー心理学「幸せの3条件」をグルグルと回していくことは、子育てにおける「子どもの自立」と直結しています。つまり、子どもが「自己受容 → 他者信頼 → 他者貢献」という好循環のサイクルを感じながら日々を過ごしていくこと自体が「自立していく」過程そのものである、ということです。

愛する子ども達に、自分の「在り方」「生きざま」をもってこの「幸せの3条件」を伝えることができ、子どもがそうした親の姿を「お見本」としてまねしながら成長していくことができるとしたら、とってもステキなファミリーになれるとは思いませんか。

【参考文献】

●アドラー・子育て 親育てシリーズ 第1巻 育自の教科書 ~父母が学べば、子どもは伸びる~(熊野英一/アルテ)

●アドラー心理学教科書 -現代アドラー心理学の理論と技法- (監修 野田俊作 編集 現代アドラー心理学研究会/ヒューマン・ギルド出版部)

●7日間で身につける!アドラー心理学ワークブック(岩井俊憲/宝島社)

熊野英一
フランス・パリ生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本にて人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学(MBA/経営学修士)。製薬企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスのコティに統括部長として入社。約60の保育施設立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事。2007年、子育て支援を創業、代表取締役に就任。2012年、日本初の本格的ペアレンティング・サロン「bon voyage有栖川」をオープンし、自らも講師として<ほめない・叱らない!アドラー式の勇気づけ子育て>を広めている。2016年4月「アドラー・子育て 親育てシリーズ 第1巻 育自の教科書 ~父母が学べば、子どもは伸びる~/アルテ刊」を発刊。日本アドラー心理学会 正会員。

[日経DUAL 2016年3月11日付記事を再構成]

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