AI・ロボットの苦手分野に勝機を見いだせ!生き残るために、支えるために~プロローグ(4)

公認会計士・税理士 藤田耕司  日本経済新聞社 編集委員 渋谷高弘

公認会計士・税理士 藤田耕司  日本経済新聞社 編集委員 渋谷高弘
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東京五輪・パラリンピック後、「post 2020」の未来では、私たちは様々な課題と向き合うことが予想されます。その一つにAIやロボットの急速な進化が挙げられます。人間の仕事は徐々にAIやロボットに取って替わられるでしょう。となると、私たち一人ひとりの働き手は、機械化が及びにくい分野で価値を発揮する他なくなります。その一つが人の「心」を扱う仕事です。

この連載では、心理学に通じた公認会計士・税理士の藤田耕司氏と、日本経済新聞社の渋谷高弘編集委員が、新たな時代へ向けて挑戦を続けている人たちへの取材を通じて、その答えを探ります。今回はそのプロローグ編の最終回となる第4回。

藤田耕司(ふじた・こうじ)=左 公認会計士、税理士、心理カウンセラー。1978年徳島県生まれ。2002年早大商卒。監査法人トーマツを経て、FSG税理士事務所、FSGマネジメント、日本経営心理士協会を設立。 渋谷高弘(しぶや・たかひろ)=右 日本経済新聞社 編集委員。1990年入社。主に企業取材、法務関連を担当。主な著書に「中韓産業スパイ」「特許は会社のものか」。

渋谷 藤田さんは公認会計士、税理士ですが、経営と心理学を融合した「経営心理学」に基づくコンサルティングや講演、研修などにも取り組まれています。なぜそうした活動を始めたのですか。

藤田 色々な会社の財務諸表などの数字をみて、経営の現場の話を聞くうちに、業績の数字と心はつながっていると感じるようになりました。決算書の数字の裏にはその会社の顧客や従業員といった「人」のドラマと心の動きがあります。つまり、数字を良くするには人の心をつかむことが必要なのです。このため、経営者や管理職は経営にあたって人の心についての理解を深めることが必要だと考えたのが出発点です。

渋谷 これまでにない新たな試みですね。

藤田 私は様々な経営の相談を受けますが、一番多いのは「人」に関するものです。その際、心理学を踏まえながら問題を分解して説明するとよく理解してもらえます。そして、その理解に基づいて問題の解決にあたると、とても効果を実感できます。また、現場の事例を分析して整理していくと、人の心の傾向が見えてきます。こうした現場の心の傾向と学問的な心理学をリンクさせると多くの発見があります。こうした内容を講演や研修でお伝えしています。

人の心や感情をくみ取る仕事に活路

渋谷 前回、AIやロボットが台頭しても心を扱う仕事は機械化が難しいという話を伺いました。こうした仕事では経営心理学はより効果を発揮しそうですね。

藤田 そうですね。機械化が難しい仕事として、リーダーシップの発揮やチームづくり、商談・交渉、人材教育など、人の心や感情をくみ取った対応が求められる仕事が挙げられます。心や感情を扱う以上、その体系的な理解を深めることはとても重要ですし、現場志向の心理学を学ぶことは有効だと思っています。

渋谷 藤田さんは多くの経営者と関わることが多いかと思いますが、現場の経営者の声を聞く中で、これからの時代をどのように考えますか。

藤田 これからの時代という意味では、経営者が強い関心を持っていると感じるのは、AIや機械の進化についてです。技術の進化のスピードは2乗、3乗といった乗数のグラフのように加速度的に速くなるため、経営を取り巻く環境は今後、めまぐるしく変わり、消えていく事業も増えるでしょう。

機械に奪われない事業を見極めろ

AIやロボットには難しい付加価値の創造が求められる(PIXTA)

藤田 このため、今の事業がいつまで継続できるのかを見極め、既存の経営資源と新たな技術を活用して新しい事業をつくり、素早くシフトすることが求められる時代になると思います。実際、現在の事業が近い将来、機械に奪われると判断し、新たな事業へのシフトを始める経営者も増えています。

渋谷 なるほど。現場で働く従業員の声はどうですか。

藤田 私は「技術の進化と今後の時代の付加価値」をテーマとした講演や企業研修も行っています。その中では、現在の自分の仕事について、機械化されやすい仕事、機械化が難しい仕事について参加者に話し合ってもらい、将来も付加価値となるのはどのような要素か、ということを考えてもらいます。そこで出てくる意見は現場の生の声であり、貴重な情報として注目しています。

渋谷 興味深いですね。今後も付加価値となりうるのはどのような要素なのでしょうか。

藤田 一言で言い表すのは難しいですが、多く出る意見としては、心を通わせるコミュニケーションができる力、多くの人と信頼関係をつくっていく力、新たな技術を駆使して新たなマーケットをつくる力などです。

リアルなつながり、仲間こそが力に

藤田 今、改めて人対人のリアルなつながりの大切さが見直されているように感じます。また、環境がめまぐるしく変わる状況では、自らの適性と時代の流れに合ったポジショニングが重要になります。

そういった動きができるよう業界や企業の枠を超えた幅広い仲間をつくること、そしてそこから確かな情報を集めることも大きな価値を持ちます。どんな状況でも協力し合える仲間をつくることが、激動の時代においては、ある意味、一番の安定なのかもしれません。

渋谷 その意味でも、人や心に関する理解を深めることは、今後の時代においてより重要になりそうですね。そういった動き方をする上で参考となる情報を、次回以降の連載で藤田さんと共に探っていきたいと思います。

=この項おわり

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