AIとロボットの脅威を前にどうキャリアを築くか?生き残るために、支えるために~プロローグ(3)

公認会計士・税理士 藤田耕司 日本経済新聞社 編集委員 渋谷高弘

公認会計士・税理士 藤田耕司 日本経済新聞社 編集委員 渋谷高弘
PIXTA
PIXTA

下りエスカレーターに乗っているかのように下降曲線をたどる日本経済。当面は2020年開催の東京五輪・パラリンピックをめざし、カンフル剤を打ち続けて景気の底上げを図っていますが、 “宴(うたげ)の後”には、その反動が待ち受けていることが予想されます。さらに想定されるのが、人工知能(AI)の普及などによる大きな社会の変化。五輪後の時代「post 2020」に向けてどう備えるかによって、私たち働き手一人ひとりの未来が大きく変わります。

この新連載では、心理学に通じた公認会計士・税理士の藤田耕司氏と、日本経済新聞社の渋谷高弘編集委員が、新たな時代へ向けて挑戦を続けている人たちへの取材を通じて、その答えを探ります。今回はそのプロローグ編の第3回。

藤田耕司(ふじた・こうじ)=左 公認会計士、税理士、心理カウンセラー。1978年徳島県生まれ。2002年早大商卒。監査法人トーマツを経て、FSG税理士事務所、FSGマネジメント、日本経営心理士協会を設立。 渋谷高弘(しぶや・たかひろ)=右 日本経済新聞社 編集委員。1990年入社。主に企業取材、法務関連を担当。主な著書に「中韓産業スパイ」「特許は会社のものか」。

渋谷 藤田さんは「post 2020」の社会をどう考えますか。

藤田 地価下落に伴い景気が冷え込んだり、少子高齢化がさらに進み労働人口が減ったり、いろいろと懸念されることはありますが、もっとはっきりした変化が起きるのは人工知能(AI)やロボットの発達による社会の変化ではないかと思います。

渋谷 最近、そうした話題が増えていますね。確か、藤田さんは人工知能や機械化に関する講演もされていましたよね。

■AI・ロボットの脅威に備えよ

藤田 はい。これからの時代のビジネスやキャリアを考える上で、AIやロボットがもたらす影響を考慮しないのは危険だと思っています。近い将来、確実に機械化される仕事でいくらスキルを磨いても意味はありませんし、そうした仕事が売り上げの大半を占める企業は、すぐにでも新たなビジネスモデルを考える必要があるでしょう。

渋谷 こうした動きで特に懸念されることはありますか。

藤田 例えば、工場で使われる産業用ロボットの高性能化、低コスト化で、これまで人手に頼っていた作業をロボットが代替する事例が増えています。さらに今後、文字を認識できるAIとさまざまなシステムとの連携が進めば、相当な数の仕事がAIに取って代わられるでしょう。

AIやロボットの導入コストを人件費の削減で短期的に回収できると判断すれば、企業がその導入を一気に進めることも十分に考えられます。実際、私の周りでもAIを使ったシステムを導入することで総務・経理の人員を減らした事例があります。

渋谷 しかし、労働組合がある企業などは、そう簡単にリストラを進められないでしょうから、すぐに雇用が大きく失われるとは考えにくいのではありませんか。

AI・ロボットを前提にしたビジネスモデル

ロボットが人間を代替する事例が増えている(PIXTA)

藤田 そうした企業では大規模リストラの意思決定は難しいでしょう。ただ、はじめから人を抱えずAIに多くの仕事を任せるというビジネスモデルの会社が生まれてくると、そのビジネスモデルが徐々にスタンダードになっていくかもしれません。低コストで同じ事業を展開し、得た利益で更にAIを強化するということを繰り返されると、大企業もうかうかしていられないでしょう。

渋谷 確かに、はじめからそういうビジネスモデルの会社をつくるというのであれば、あり得る展開ですね。

藤田 あまり現実化してほしくないシナリオですが。ただ、今後はこれまで以上のスピードでAIやロボットは進化していきます。2020年の社会では雇用の状況もずいぶん変わっていると思います。

補完関係にある少子高齢化と機械化

藤田 現在、介護職やとび職、トラック運転手など、多くの業界で人手が不足しています。少子高齢化が進むことでこの人手不足はさらに深刻化すると考えられますが、AIやロボットを活用することで部分的に補える可能性は大いにあります。このため、少子高齢化と機械化は補完関係にあるといえます。そして、機械化される仕事から機械化が難しい仕事へと人がシフトしていくのではないかと予想されます。

渋谷 なるほど。機械化される仕事、機械化が難しい仕事とはそれぞれどのような仕事ですか。

藤田 機械化されやすい仕事としては、一定の動作を繰り返す作業や複雑な判断が不要な仕事、あるいは知識を提供するだけの仕事などが挙げられます。一方で、機械化が難しいのは人の心の機微をくみ取った対応が求められる仕事やクリエーティブな発想やひらめきが求められる仕事が挙げられます。

渋谷 人の心の機微をくみ取った対応が求められる仕事とはどのような仕事ですか。

心を扱う仕事が注目される時代に

藤田 例えば、交渉や教育など相手の気持ちを読んでその気持ちに合わせた対応が求められる仕事や、モチベーションを上げる仕事、リーダーシップを発揮して組織をまとめる仕事、信頼関係をつくっていく仕事などが挙げられます。おもてなしや気配りが求められる仕事もそうですね。

渋谷 まさに心を扱う仕事がより注目される時代になっていくということですね。

藤田 今後、人間が価値を発揮できる分野はAIやロボットの発達と共に減っていくかもしれません。ただ、心を扱う分野は人間がまだまだ強みを発揮できる分野だと思います。

渋谷 なるほど。興味深い。次週はそのあたりの話を聞かせてください。

<<(2)五輪後を生き抜くオープン&クローズ戦略

「post2020~次世代の挑戦者たち」記事一覧

今こそ始める学び特集