五輪後の経済を生き抜くオープン&クローズ戦略生き残るために、支えるために~プロローグ(2)

公認会計士・税理士 藤田耕司 日本経済新聞社 編集委員 渋谷高弘

公認会計士・税理士 藤田耕司 日本経済新聞社 編集委員 渋谷高弘
調印式を終え、握手する(右から)シャープの高橋興三社長、鴻海精密工業の郭台銘董事長、戴正呉副総裁

シャープは、1912年に発明家の早川徳次氏が創業した会社で、シャープペンシルや電子卓上計算機(電卓)を生みだした、技術や知財を大事にしてきた会社です。ところが液晶事業にこだわりすぎて過剰投資で失敗し、多くの技術者が流出しました。こうして経営と技術の足腰が弱った結果、取引先だったホンハイに買収されたのです。

藤田 戦後の日本経済を引っ張ってきたのは、電機メーカーと自動車メーカーといわれてきましたが、ショックですね。そういえば2000年以降、ソニーやパナソニックなど日本の大手電機メーカーが軒並み経営不振に陥りました。一体何があったのでしょうか。

渋谷 簡単にいうと、インターネットが普及したことでパソコンや携帯電話など電機製品の技術が、欧米のつくった「グローバル標準」に傾いていったことが大きな原因です。

その代表が米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」です。つまり、それまでは単体の道具として使われていたパソコンや携帯電話などがネットに接続されるようになり、そのために仕様を業界共通にしなければいけなくなったのです。

ウィンドウズ3.1日本語版発売を発表するマイクロソフトのビル・ゲイツ氏(1993年)

日本の電機製品の強さは、すべてを自社グループで研究開発し、細かな機能や性能で差をつけるところから生まれていました。しかし技術がグローバル標準化してしまうと、そうした強みを発揮できなくなり、部品や技術を世界中から調達し、ひたすら安く、効率的に製品を作ることができる韓国や中国、台湾のメーカーに有利となっていきました。

経営不振になった日本企業から技術流出が起き、さらに差が縮まり、ついに逆転されてしまったのです。

藤田 残念ですね。それに比べると、自動車ではトヨタ自動車を筆頭に日本勢が頑張っているように感じます。

渋谷 自動車はデザインや燃費性能、安全性など、まだ個々の製品の差で売ることができているためです。ただ今後、電気自動車(EV)などが普及し、技術が汎用品(コモディティー)化していくと、日本の自動車メーカーの優位が続くかは不透明です。

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