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NPO淘汰の時代 客観的な評価、重要に

2016/4/24

NPOの活動内容や支援メニューを紹介するコーナー(横浜市神奈川区のかながわ県民活動サポートセンター)
 全国での認証数が5万を超えたNPO法人。事業資金が増え、活発に活動するNPOが目立つ一方で、人材難などから活動を休止するNPOも増え、選別が必要になってきた。

 神奈川県は昨年10月、介護支援のNPO法人など4法人に、認証を取り消す処分を下した。4法人は毎年の活動内容を示す事業報告を、所管する神奈川県に提出する義務があったが、3年以上、報告がなかった。

■目立つ解散・休眠

 介護支援のNPO法人の設立認証は2001年。同法人の定款には「介護に携わる人々に対して、介護現場で生じる諸々の問題に関する無料相談、情報の提供、ネットワークづくり、生活の基盤づくりなどの支援活動……」と事業の目的が記されている。

 NPOはボランティアなど営利活動を目的としない団体の総称だ。阪神大震災を機に関心が集まり、法人格を得やすくなるNPO法が1998年に施行。以来、NPO法人は急増し、認証を受けている法人数は今年2月末で全国で5万強。その一方、解散したNPO法人も約1万1000にのぼり、このうち約2600は行政から認証の取り消し処分を受けた。休眠状態の団体もかなりの数にのぼる。

 神奈川県の萩生田美穂子・NPO協働推進課長は「NPO法人を様々な方法で支援しているが、NPOの活動は自主性が大切。活動が滞っても、事業に介入はしていない」と説明する。

 参加メンバーの高齢化が進んで人材の確保が困難になる団体、設立時の目的を達成し、活動の意義を見いだせなくなった団体、寄付金が集まらず、活動を継続しづらくなった団体など解散・休止の事情は様々だ。

 NPO法人、言論NPO(東京・中央)の工藤泰志代表は「ブームに乗って設立したものの、市民社会をリードするという原点を見失っているNPO法人が多い。外部からのチェックが働きにくいことも休眠法人が増えている原因」と指摘する。

 寄付金の使い道が不透明な団体があると自治体に通報があり、解散に追い込まれた団体もある。「外部の目」で活動内容をチェックできる仕組みを求める声は多い。

 「あなたの組織の使命や目的を示す文書があり、組織が取り組む課題やテーマが明確になっていますか」。言論NPOは望ましい非営利組織の姿を示す「評価基準」を作り、「市民性」「社会変革性」「組織安定性」の観点から約100のチェック項目を設け、自己診断を促している。

■1割が収益1億円

 解散・休眠団体とは対照的に、有給職員を雇って事業収益を大きく増やすNPOが増えている。内閣府が約1600のNPO法人を対象に昨年実施した調査によると、事業収益が1億円超と回答した団体が約11%に達した。

 福祉や教育などの事業収益が増えるにつれ、「一般企業と見分けがつかない」(後房雄・名古屋大教授)団体もあり、支援するなら、やはり「目利き」が欠かせない。

 事業規模が大きいNPOこそ客観的な評価が必要と指摘するのは公益財団法人パブリックリソース財団(東京・中央)の岸本幸子専務理事。同財団は寄付を希望する人と、NPO法人などの仲介役だ。寄付を受ける適格性を、具体的な成果、ガバナンスなどの項目別にチェックしている。

 社会起業家を支援するNPO法人、エティック(東京・渋谷)の宮城治男代表理事は「客観的な評価基準を十分に満たせるNPOは数百のレベルにとどまる」との見方を示す。しかし、若い世代を中心にNPOを通じて社会にイノベーションを起こす動きが広がりつつあり、「NPO全体が育っていく流れを加速させたい」と話す。

 何のためのNPO法人なのか、原点に戻って活動内容を再点検するときだろう。

 ◇   

■組織運営の難しさ吐露 活動内容、妥当性に賛否

 「お金の使い道がわからない団体に寄付するのはちょっとためらう」「NPO法人を何とか監視する方法はないものか。中にはしっかりしている団体もあるのだろうが」「形だけの社会貢献事業、法人、団体が多すぎ」……。ツイッターでNPOを厳しく批判する人が増えている。NPO法人の看板を利用した一部団体の不正行為が明らかになり、NPO全体のイメージを悪化させているようだ。

 一方、「震災関連のNPOの多さに驚きます。行政は何をしているのだろう」「社会貢献に身を粉にしているNPOがたくさんあるのに」などNPOの存在意義を強調するつぶやきも多数。「当事者意識が強いリーダーが、こうあるべきだという思いをメンバーにごり押ししてしまっている」と組織運営の難しさを訴える声もある。調査はホットリンクの協力を得た。

(編集委員 前田裕之)

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