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「社外取締役も辞める覚悟で」 混迷のセブン人事 一橋大大学院の江川雅子教授に聞く

2016/4/20

 トップ人事で混迷したセブン&アイ・ホールディングス。19日、取締役会を開き、会長兼最高経営責任者(CEO)だった鈴木敏文氏が退任し、社長に井阪隆一セブンーイレブン・ジャパン社長が昇格する人事を決めた。社外取締役が「カリスマ経営者」の人事案をひっくり返した形となった今回の逆転人事劇。社外取締役の存在とはどういったものか。にわかに注目を集めるその役割について、日米両国のコーポレートガバナンスに詳しい一橋大学大学院商学研究科の江川雅子教授に聞いた。

――社外取締役の役割とは何ですか。

 企業価値を最大化するために企業が進むべき方向性の「かじ取り」をすることだ。大きく分けて2つある。1つ目は、「経営陣の人選」、つまり社長を誰にするかということ。2つ目は、大きな視点から企業の戦略を決めることだ。逆にそれ以外の細かなことに、取締役会が口を出すべきではない。

 ソニー盛田氏の引退を促したのは社外取

 社外取締役を「保険のようなもの」という人もいる。業績が悪化したり、経営に何か課題が生じたりすると介入する役割だ。世間の注目を集めるのもこのケースだろう。古い話だが、病気療養中だったソニーの盛田昭夫会長(当時)に、会長職から退くよう促したのは社外取締役のピーター・ピーターソン氏(ブラックストーン・グループの創業者で元米商務長官)だったという。ソニー社内の人間では、盛田氏に「会長から降りるべきだ」とはいえない。

江川雅子教授

――今回のセブン&アイの人事交代は、まさに経営陣の人選にかかわることで社外取締役と現会長が対立した。後継者選びのために、必要なポイントは何ですか。

 早い段階から複数の候補者を選び、育成することだ。そのプロセスのなかで、どのようなスキルや経験を持った人がふさわしいかを話し合い、候補者に求める要件を共有する。

 社外の人間は、「次のトップは誰がふさわしいか」ということを決めるのは、情報の格差もあり社内の人間よりも難しい。しかし、会社の課題や戦略を理解していれば、議論もできる。具体的な人選に入る前に求められる要件をしっかり議論するのが望ましい。重要なことは、たとえ最終的に同じ人物が選ばれたとしても、そのプロセスを踏むことで選ぶ基準や人選に透明性が出ることだ。

――米国と比べ、これまでの日本の社外取締役は、いわゆる「社長のお友達」といった印象も強かったのですが。

 米国でも昔はそのように言われていたが、現在ではCEOや最高財務責任者(CFO)を除けば取締役会を構成する人員の8割が社外、ということは当たり前になっている。日本も徐々にだが変わりつつある。

 かつては取締役会の出席率の低さが問題になっていたし、それぞれが得意な分野のアドバイザーとしての役割がメーンだった。しかし、最近では社外取締役の意見で会社の意思決定が変更されるケースも出てきている。

 時には空気を読まない発言も

――今、求められる、社外取締役の責任とは何でしょうか。

 執行部との信頼関係を維持しながら、時に「空気を読まない発言」のできる「モニタリングボード」としての役割だろう。もし全員が空気を読み、違和感を感じても発言しなければ、大きな問題になる。

 社外取締役は、「いつでも辞められる」覚悟で臨むべきだろう。その企業のトップとあまりに仲がよくて癒着しても困るし、社外取締役を続けなければ生計が立たない、というのも困る。何かあったら辞められる心構えを持つ。理想論だが、これが社外の人間に期待される役割だ。

江川雅子氏(えがわ・まさこ)
1980年東京大学教養学部卒、86年米ハーバード大学経営大学院修了。1986年から2001年まで米ニューヨーク及び東京で外資系投資銀行に勤務、M&A(合併・買収)やエクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)などの業務に従事。09年から15年まで女性初の東大理事を務めた。15年から一橋大学大学院商学研究科教授。旭硝子、東京海上ホールディングス、三井不動産の社外取締役を務める

(聞き手 代慶達也 松本千恵)

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