コンビニシュガードーナツ対決 専門店に一日の長
砂糖でコーティングしたグレーズドドーナツ
今回のコンビニ食品実食テストの対象は、シンプルな味わいが魅力のシュガードーナツ。各コンビニで味にどれだけ違いがあるのか、そして本当においしいのか。その疑問を解消すべく、「味香り戦略研究所」による味覚分析と、食のプロによる実食で、セブンイレブンとローソンのシュガードーナツをチェック。また、ドーナツ専門店との比較も気になるところなので、今回はクリスピー・クリーム・ドーナツも加えた3商品の味の傾向を明らかにしていく。
実食するのは以下の3商品だ。
○ローソン「シュガードーナツ」(93円)
○クリスピー・クリーム・ドーナツ「オリジナル・グレーズド」(149円)
セブンイレブンとローソンのドーナツは、レジ横の専用ケースで販売されている。工場で作られたドーナツを短時間で各店舗に納品し、このケースで温度・湿度を管理しておいしさをキープ。一方、専門店のクリスピー・クリーム・ドーナツは各店舗で調理している。
今回実食するシュガードーナツは、揚げたドーナツに粉砂糖をまぶしたものではなく、砂糖でコーティングしたグレーズドドーナツと呼ばれるタイプ。表面のグレーズ(シュガー)がシャリッとした食感で、軟らかい生地と異なる食感が楽しめる人気ドーナツだ。
セブンイレブンは分厚く丸いドーナツを使用し、表面にグレーズをかけている。裏面にはかかっていないので、グレーズがかかっている部分との食感・味のコントラストを狙っているものと思われる。ローソンはツイストドーナツの全面にグレーズをかけてコーティングしている。わずかながらセブンイレブンのほうが色が白いことから、グレーズがしっかりかかっているように見える。ローソンはツイストの溝にグレーズがたまっているため、こちらも生地表面と溝の部分で異なる食感が期待できそうだ。
専門店であるクリスピー・クリーム・ドーナツは、グレーズドドーナツが看板商品。リングドーナツの全面をグレーズでコーティングしていて、セブンイレブンとローソンに比べると透明感がある。グレーズ自体の色が透明なのか、コーティングが薄いのかは不明だが、印象として"軽さ"を感じるドーナツに仕上がっている。サイズ自体も3商品でもっとも小さい。
グレーズの色やかけ方の違い、ベースとなるドーナツの形状の違いは、味にも影響があるのだろうか。そしてコンビニより専門店のドーナツのほうがおいしいのか。味覚分析の結果とプロが実食した感想から、それぞれのグレーズドドーナツの特徴を見ていこう。
セブンはあっさり、ローソンはバランスが良い
各社のシュガードーナツを、味香り戦略研究所の味覚センサーで分析した。その結果は棒グラフの通り。
各社ともにシュガードーナツらしい甘味があることが分かった。棒グラフが一番長いローソンは、甘味に加えて旨味・苦味ともに数値が高い。この味覚分析の結果について、同研究所の味覚参謀(フェロー)である菅慎太郎氏は、「バランスは良いが、甘味が強いため、生地のこだわりやおいしさに気づかない場合があるかもしれない」と分析。
セブンイレブンは僅差ではあるが棒グラフが一番短く、ローソンと比べると特に旨味の数値が低い。この結果について菅氏は、「甘味では他社に劣っていないが、旨味が弱いのが気になる。旨味が不足すると物足りなさを感じてしまう」と話す。ドーナツの旨味は、生地の旨味と深く関わっているらしい。生地に使う小麦粉の旨味や生地の寝かせ具合など、材料の品質や製造工程がドーナツの旨味のカギを握るという。
一方、コンビニ2社より甘味が強いクリスピー・クリーム・ドーナツは、「とにかく甘さが際立っていて、グレーズドの特徴がはっきりと出ている」(菅氏)と分析する。
では、味の印象に大きく影響する甘味と旨味のバランスについて、下図でさらに詳しく見てみよう。
改めてクリスピー・クリーム・ドーナツは甘味が際立っていることが鮮明になったはず。また、ローソンは旨味が強いことも確認できた。
これらの結果を頭に入れて、次ページからのプロの審査員による感想をチェックしてほしい。味覚分析の結果と審査員の感想から自分の好みに合ったシュガードーナツを選んでいただきたい。
平岩氏~ふんわり感と口どけが決め手
1カ月に200種類以上のスイーツを食べ歩くというスイーツジャーナリストの平岩氏に実食をお願いした。どこのシュガードーナツか分からない状態で食べてもらい、どれがおいしかったか、その順位を付けてもらうとともに各商品の感想をもらった。
○1位 クリスピー・クリーム・ドーナツ
決め手となったのは生地のおいしさで、「ふんわり軟らかく、心地良い食感」と話す。グレーズに関しても「薄めにかかっていて出来たて感がある」とコメント。自身が「グレーズは食感と甘さのバランスから、薄いほうが好み」であることも影響しているようだ。「砂糖の甘さは変わらないので、口どけによって感じる甘さに違いが出てきます。口どけがいいとあっさり食べられて、グレーズが厚いと口に残るので甘く感じます」とのこと。クリスピー・クリーム・ドーナツは「口に入れたときにスーッととけていく」と、ふんわりとした生地+薄いグレーズのバランスの良さを高く評価した。
○2位 ローソン
「生地が二番目にふんわりしている」というローソンが2位に。ツイストになっているため「ふっくらしていて少し弾力があり、全体的にふんわり感があっておいしい」と話す。クリスピー・クリーム・ドーナツほどではないものの、軟らかく軽い生地に仕上げている点が気に入ったようだ。グレーズについては「そこまで厚くないので好み」としながらも、「ツイストの溝はグレーズが厚くなっていて少し気になった」ともコメントした。
○3位 セブンイレブン
3位のセブンイレブンは、「生地がふんわりでもなくしっとりでもなく、少しパサついていてあまり好みではない」とのこと。続けて「やや硬めで、弾力があるわけでもない」と、生地の仕上がりに不満を述べた。グレーズに関しても、「厚めにかかっているので甘さが口に残る」という。やや油っぽさも感じたと話し、「砂糖と固体油脂を混ぜたような食感?」と首を傾げた。
「クリスピー・クリーム・ドーナツには作りたてのおいしさがあり、これは流通のことを考えるとコンビニでは難しいと思います。とはいえローソンがふんわりしているのに、なんでセブンイレブンはこんなに硬いのかも不思議なところ。ローソンは見た目も他社と違うし、ツイストによる食感の変化も楽しめるし、頑張っていると思いますね。クリスピー・クリーム・ドーナツは飲み物がなくても一個ペロリと食べられるほど軽いですが、セブンイレブンは飲み物が欲しくなる。もしかするとドーナツとコーヒーを一緒に買うことを前提として作られたものかもしれません。逆にコーヒーには合いそうなので」。
あまい氏~ローソンには工夫が感じられる
ドーナツ評論家としてメディアにも出演する人気スイーツブロガーのあまい氏に実食をお願いした。どこのシュガードーナツか分からない状態で食べてもらい、どれがおいしかったのか、その順位を付けてもらうとともに各商品の感想をもらった。
○1位 クリスピー・クリーム・ドーナツ
あまい氏が1位に選んだのは、「噛むと沈みこむ生地の食感と口どけの良さ」を高く評価したクリスピー・クリーム・ドーナツだった。「グレーズの量と生地の量のバランスがすごくいい。一体感がある」とコメント。「軟らかくて軽やかで、とにかくおいしい」と絶賛した。グレーズについても「いい砂糖を使っているのか、上質感がある」との感想を述べた。
○2位 ローソン
「パンに近い生地で食べ応えがある」と評価したローソンが2位に。「生地はイーストの酵母の力が利いていて、ふっくら軟らかいのに弾力がある」と話す。「食感を含めてパンチがあるドーナツ。そして、それに負けないグレーズのコーティングが◎」とのこと。厚みと硬さのあるグレーズが、しっかりとした生地とマッチしていた点が気に入ったようだ。
○3位 セブンイレブン
3位のセブンイレブンは、「生地もグレーズも口どけがあまり良くない」という。「生地はケーキに近い食感で、ちょっとパサついている」と話す。グレーズに関しても「独特の風味があり、甘さも気になる」ことから順位を下げたようだ。「口どけが命のグレーズドドーナツで、生地とグレーズに一体感がなく、口に残るのはいただけない」と指摘した。
「一日の長があるクリスピー・クリーム・ドーナツはさすがのおいしさ。食べた瞬間にクリスピーのドーナツと分かるクオリティーの高さを改めて感じました。時代が変わってもこのままの味であってほしいですね。ローソンにはいろいろと工夫が見られて頑張っていると思いました。ツイストした生地はパン好きの心をくすぐるし、サイズも大きく食べ応えがある。しっとりしていてリッチ感もあり、クリスピー・クリーム・ドーナツのようなグレーズドドーナツを目指しながら、その中に進化したおいしさを感じましたね。セブンイレブンも味はおいしかったけど、食感で差がついたかな」
(ライター 津田昌宏)
[日経トレンディネット 2016年3月31日付の記事を再構成]
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