浪費なのに「黒字感覚」 家計の見える化のススメ家計再生コンサルタント 横山光昭

「計算上は毎月黒字のはずなのに、まったくお金がたまりません」と困り顔で家計相談に来たのは会社員の女性Kさん(37)。小学1年生と1歳のお子さん、会社員のご主人(35)の4人暮らしです。

下のお子さんの育児休暇中にご主人の給与が減ってしまったため、収入アップの目的でお子さんが1歳になる前に復職し、家計のやりくりを頑張ってきたそうです。ですが、貯蓄は増えるどころか減る一方。何とかしなくてはいけないと、ご夫婦で相談に来ました。

すでに、ご夫婦とも格安スマートフォンに変えて通信費を下げたり、LED電球や節水シャワーを使って水道光熱費の削減を試みたりして、支出削減に取り組んでいるそうです。その削減効果を実感しているそうで、「いまの収入でも足りているはず」とおっしゃいます。ですが、支出がわかるような記録はつけておらず、感覚だけで「黒字だろう」と判断していました。

実際、支出の聞き取りをしていると、Kさんが予想していた金額とは異なる項目がたくさん出てきました。夫婦合算で毎月60万円ほどの収入があるのに、実は赤字になっているようなのです。

Kさん夫婦は下の子どもが生まれる前まで夫婦別財布でしたが、産後は夫婦でうまく合わせようとしたそうです。でも、仕事中の昼食代はそれぞれが払っているし、食材も気づいた人が買うからという理由で、小遣いとは別に5万円ほどを別々に管理していました。

残額があれば家計に戻すというやり方をしているものの、別々の管理が災いし食費は月8万円を超える額になっていました。水道光熱費もせっかく節約グッズを購入したのに、照明や冷暖房器具はつけっぱなしですし、シャワーを浴びたり食器を洗ったりするときは水を流しっぱなしにしがちで、節約効果が出ていません。

また「ティッシュや洗剤などの日用品代は月6000円ほどに収まっています」と話していましたが、実際はかなり高額になっていました。アロマ対応の加湿器、保温水筒や保温弁当箱などの電気器具、ホームセンターで売っている便利グッズなどを毎月、無計画に購入しています。

Kさんは「必要だから買っている」という認識のようですが、明らかな浪費です。ほかに紙おむつ代やベビーマッサージなどに使うクリームなどの支出もありますから、毎月恒常的に高額支出になるのは当たり前です。

そのほか、無認可保育園の保育料が7万5000円、小学生のお子さんの英会話、学習教材代などの教育費も負担が大きく、交際費・娯楽費も飲み会や夫の趣味のスポーツ代などが入り、少々支出が膨らんでいます。

Kさんご夫婦が言うには「これらは必要な支出」ということなのですが、私のような第三者から見ると単なる浪費です。つまり、自分たちを肯定したくて「言いわけ支出」を作ってしまっている家計だったのです。

聞き取りをした支出を合計すると、明らかに収入を超えていました。実は、毎月1万2000円ほどの赤字になっていたのです。

この状況にKさんご夫婦はショックを受けているようでした。今まで頑張って節約してきたという気持ちがあるからでしょうが、よくない状況が明らかになったことがKさんご夫婦の行動を変えるきっかけになりました。

食費は夫婦別々に管理することをやめ、すべての収入を合わせて管理することにしました。仕事帰りに食材を購入するなら、まず小遣いで立て替えて購入し、後で家計費から精算するというルールをつくりました。さらに、今までに購入した弁当箱や水筒などがたくさんあるので、夫婦で協力して夕食の残りなどを弁当箱に詰め、お弁当を持参する努力を始めました。

日用雑貨品は安易に買わず、本当に必要なのかをよく検討することにしました。家の中を見渡すと、買ったのに使っていないもの、すぐに使わなくなったものがたくさん見つかったそうです。「欲しいと思ったら夫婦で必ず相談する」と決めたことにより、日用品代はかなり削減できました。

「本当に必要か」を常に考えるようになった結果、交際費・娯楽費、美容院代なども削減できました。生命保険の保障内容も見直し、合計で10万1000円の支出削減ができました。そして、毎月の収入から8万9000円を貯蓄に回せる家計に変わることができたのです。

節約などを頑張っても、支出がどのくらいかという数字が見えていなければ、誤算が生じます。家計は感覚だけで把握していてはうまくいかないことが多いのです。やはり、何らかの方法で記録を付けるなどして「見える化」することが必要ですし、それが家計改善の効果をもたらすのです。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は5月4日付の予定です。
横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで8000人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計99万部。近著は「『おひとり』を不安0で生き抜く女子貯金」(祥伝社)。
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