女性特有の病気が心配 損せずに備えるには

2016/4/21

マネー女子力

30代、40代と年齢が進むにつれて、心配になってくるのが女性特有の病気。そんな不安に対応して、女性向けの医療保険も販売されています。こうした保険商品には入るべきか。保険以外に備えるための選択肢はあるのか、冷静に考えてみましょう。

女性向け保険は保障が手厚い分、保険料が高い

女性向けの保険とは、子宮筋腫や子宮がん、乳がんなど女性特有の病気に対して保障を手厚くした医療保険。入院給付金や手術給付金の額が他の病気の場合の1.5~2倍程度になる商品が一般的です。例えば入院給付金が日額5000円の契約なら、女性特有の病気での入院では日額1万円になるといった具合です。医療保障に加えて、3~5年ごとに5万円から15万円程度の「お祝い金」などを受け取れるタイプの商品もあります。

そう聞くと「女性の味方の心強い商品」というイメージを抱いてしまいそう。しかし保険会社もタダで保障を付けているわけではありません。女性特有の病気の保障が手厚い分、保険料は高くなります。医療保険に詳しいファイナンシャルプランナーの内藤真弓さんは「そもそも一般の医療保険でも女性特有の病気は保障対象になっているので、余分なコストをかけてまで『女性向け』に加入する必要はないでしょう」と助言します。「特に避けたいのはお祝い金が受け取れるタイプ。保険料の『掛け捨て』を嫌う人に人気があるようですが、お祝い金の分だけ保険料が高くなります。また、入院が一定日数以下でないと入院給付金が受け取れないなど条件付きの場合もあるので、決してお得とはいえないのです」(内藤さん)

医療費は公的医療保険でかなりカバーされている

であれば、お祝い金が付かない一般的な医療保険に加入するのが正解なのでしょうか。

実は、医療費は公的医療保険、会社員であれば健康保険(協会けんぽ、健康保険組合=健保組合)によりかなりカバーされています。月に医療費の自己負担が一定額を超えると、「高額療養費」という制度により超過分が健康保険から支給され、医療費が100万円かかっても自己負担は9万円弱で済みます(年収約370万~770万円の場合)。さらに「付加給付の制度のある健保組合だと、1カ月の医療費の自己負担が2万円程度で済む場合もあります」(内藤さん)。こうなると民間の医療保険はあまり必要なさそうですが、付加給付がない場合、治療が長期化する病気にかかったときの負担が心配という人もいるでしょう。

民間の医療保険は、貯蓄ができるまでの「つなぎ」として活用

では、医療費への備えはどう考えればいいのでしょう。

内藤さんは「医療費用の貯蓄が100万円程度あれば、民間の医療保険は不要」と提言します。「民間の医療保険は基本的に入院しないと給付金が受け取れませんが、貯蓄ならどんな医療費にも対応できます。病気にならなくても保険と違って掛け捨てにはならず、お金が残ります」

ただ、医療費用の貯蓄をいきなり100万円も準備するなんて無理という声も聞こえてきそうです。「その場合、貯蓄ができるまでの『つなぎ』として民間の医療保険に頼りましょう。ただし保険料はあまりかけないこと。例えば医療費用のお金として月5000円程度捻出し、1000円は民間の医療保険料に充て、4000円は貯蓄に充てます。入院給付金日額5000円と手術給付金だけというシンプルな保障で、保険期間10年の定期タイプの商品を選べば、月1000円程度の保険料で済みます」

医療費用の貯蓄は銀行の自動積立定期預金などを利用すると、手間なくためられます。ボーナス時に年間5万円程度積立額を加算すれば、10年間でほぼ100万円たまります。「貯蓄ができたら医療保険は卒業しましょう」。起こるか起こらないかわからないことに、いつまでもコストをかけ続けるのはもったいないからです。

病気の中でもがんが不安な人は、医療保険ではなくがん保険を利用したほうが、割安な保険料でがんに特化した保障が確保できます。「がんも他の病気の保障も確保したい人は、極力シンプルな保障内容にして貯蓄する余力を残しましょう」(内藤さん)

既に女性向け保険に加入している人は、保障内容をチェック

なお、既に女性向けの保険に加入している人は「保険料を払いながらも医療費の貯蓄ができていて、特に負担がないなら継続してもいいでしょう。保険料が高いと感じているなら保障内容をチェックし、不要な特約があれば可能な限り外します」。現状、健康状態に問題がないなら、他の割安な医療保険やがん保険に加入し直すのも選択肢です。

(構成 日経BPコンサルティング 「金融コンテンツLab.」、ライター 萬真知子)

[参考] 日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(http://consult.nikkeibp.co.jp/sp/money/)は、難しくなりがちなお金の話題を、分かりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信に当たっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。