「ドラクエ」リアルイベント ゲームの世界を体験
スクウェア・エニックスは1月「ドラゴンクエスト30周年プロジェクト発表会」を都内で開催した。
しかし、この発表会で来場者に大きなインパクトを与えたのは、続々と発表になった『ドラゴンクエスト』のリアルイベント化だろう。脱出ゲーム、アリーナでのショー、ミュージアム、テーマパークでのアトラクションを展開する。既にレベルファイブがユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で『妖怪ウォッチ』のアトラクションを、カプコンは『逆転裁判』『バイオハザード』などの舞台を展開する動きはあった。そこにゲーム業界で屈指の知名度を誇る『ドラゴンクエスト』が参入。積極的にゲーム以外でも作品世界を体験できる場を増やす戦略を打ち出したことにより、ゲームのリアルイベント化は加速していくだろう。
ドラゴンクエスト30周年プロジェクト統括プロデューサーの市村龍太郎氏は、リアルイベント化の理由を「すべては開発中の『ドラゴンクエスト11(11)過ぎ去りし時を求めて』の発売時に向けて、世の熱気を高めるため」と話す。『ドラゴンクエスト11~』は30周年度中(2017年5月まで)の発売を目指す。『ドラゴンクエスト』の本編となるナンバリングタイトルは寡作として知られる。12年発売の前作『10(10)』はオンライン専用のため、09年の『9(9)』以来『ドラゴンクエスト』から遠ざかっているユーザーも多い。
こうした状況を踏まえ、「『ドラゴンクエスト11~』に向けて、市場を再度立ち上げる意気込みで30周年プロジェクトに取り組んでいる」(市村氏)。市村氏は現在の『ドラゴンクエスト』には2つの目標があると言う。1つ目は新たなファンを獲得したり、久しぶりにドラゴンクエストで遊ぼうと思わせるきっかけを増やすこと。「アリーナでのショーは夏休みに親子で楽しめるステージ作りを目指し、お子さんが初めて体験するドラゴンクエストになるかもしれない。『脱出ゲーム』は日ごろさほどゲームをプレーしない20代に支持されているため、数年前に遊んだドラゴンクエストに再び興味を抱くきっかけになる」。2つ目は関東圏だけではなく、日本中の方にドラゴンクエストを身近に感じてもらう仕掛け作りだ。「USJのアトラクションは大阪でしか楽しめないし、『ライブスペクタクルツアー』は全国5大アリーナで展開する。ミュージアムは現在は東京・渋谷のみの予定だが日本各地でも展開したい」
ゲーム業界の動向に詳しいSMBC日興証券のシニアアナリスト前田栄二氏は「音楽フェスはリアルイベントならではの一体感や高揚感で人気を高めている。こうした動きがゲーム業界にも浸透していくはず」と語る。
任天堂もUSJでの自社キャラクターを使ったアトラクションなどの展開を発表した。ゲームメーカーは、いかに他社と差異化できるか知恵を絞ることになりそうだ。
(「日経エンタテインメント!」4月号の記事を再構成。敬称略、文・伊藤哲郎)
[日経MJ2016年4月15日付]
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