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ヒゲそりで出血、腫れ物が…カミソリ負けを防ぐ方法 皮膚の損傷を最小限にするカミソリの選び方、そり方

日経Gooday

2016/4/18

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

 まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

 今年、証券会社に入社、就職活動時代から「スカッと爽やか」が売りのフレッシャーズ。このイメージを保つために朝6時には起床。丁寧にヒゲをそり、ヘアスタイルもばっちり…のはずだったが、大学時代に無精ヒゲで済ませていたせいか、ヒゲそり跡が猛烈にヒリヒリする。肌の赤味もなかなか取れず、会社では「近頃の若者は肌が弱いなあ」なんて言われてしまった。しかも、症状はだんだんひどくなり、最近ではアゴの皮膚にプツプツと腫れ物ができたり、ヒゲそり跡に血が出て黒い点々になってしまうことも。このままじゃ、オレの爽やかさが台無しだ~。誰かカミソリ負けを上手に防ぐ方法を教えてくれ。

 よく「面の皮が厚い」なんていうが、実は顔の皮膚は全身の皮膚のなかで最も薄く、デリケート。菊池皮膚科医院(東京都荒川区)の菊池新院長は、「顔の皮膚は血行が良いので、小さな傷でも血が出やすい」と話す。

 このナイーブな顔の皮膚を守っているのが、皮膚の最上層にある角質層と分泌された皮脂によって作られた「皮膚のバリア」である。毎日のヒゲそりで角質層が必要以上にはぎ取られると、バリア機能が損なわれてしまい、ヒゲそり後のヒリヒリ感からプツプツとした吹き出物まで、さまざまなタイプの「カミソリ負け」の原因となる。

■カミソリ負けの症状は3タイプ

 菊池院長は「一言で“カミソリ負け”と言っても、その症状は“肌荒れ”という言葉と同じぐらい漠然としている」と話すが、分類すると3タイプに分けられるという。

タイプ1:主に皮膚バリアが損傷
軽度のカミソリ負けのほとんどがこの段階で、ヒゲそりによって皮膚バリアが損傷された状態だ。ヒリヒリとした刺激を感じやすく、アルコールの入った化粧水などを付けると刺すような痛みを感じることもある。ヒゲそり後の、肌の赤味がなかなか取れないこともある。

 菊池院長は「カミソリ負けの初期段階と言ってもいい。とくに冬など空気が乾燥した環境では、皮膚の潤いがなくなり角質が毛羽立つために、カミソリを当てることではぎ取られやすい」と話す。

タイプ2:ニキビ(ざ瘡)、吹き出物が出る
タイプ1の症状が進むと、バリアの損傷された皮膚の毛のう(毛穴の奥で毛根を包んでいる場所)に細菌が入りこみ、ニキビ、吹き出物など「毛瘡(もうそう)」と呼ばれるプツプツとした腫れ物ができる。多くは、ニキビと同じアクネ菌によるものだが、黄色ブドウ球菌などが感染すると「おでき」のように腫れてしまうことも。このカミソリ負けは、毎日のヒゲそりによって悪化しがちなため治りにくい。
タイプ3:その他のカミソリ負け
皮膚のバリアが損傷されることで、アレルギーによる発赤(はっせき:炎症により充血して赤くなった状態)、かぶれなどの皮膚症状が起こることもある。カミソリの刃にも使われるニッケル、コバルト、クロムなどの金属によるアレルギーや、洗顔せっけん、ヒゲそり用フォーム、アフターシェーブローションによるアレルギー性皮膚炎などがある。
アレルギー性の皮膚症状を伴うカミソリ負け

■1枚刃より3~4枚刃、「順目」が基本

 こうしたカミソリ負け、とくにタイプ1の状態を改善するには、皮膚のバリア損傷を最小限にするヒゲそりを心がけることが大切だ。まずはヒゲそり前にしっかり保湿し、皮膚に潤いを与えておこう。理容室のようにホットタオルで顔を蒸らすのもいい方法である。 使うカミソリは、切れ味がよく皮膚にキズを付けないものがよい。そういう意味では、1枚刃の使い捨てのものより、3枚刃、4枚刃のものの方が優れている。そるときには低刺激性せっけん、シェービングフォーム(泡)などをつけて「順目でそる」のが基本だ。

 そして、「何回も同じところを繰り返しそるのは厳禁」(菊池院長)だ。自分のヒゲを1~2回できれいにそれるカミソリを選び、それなくなって4~5回もこするようになったら交換時期と思うべし。

 なお電気カミソリは一見肌に優しそうだが、強く当てれば、意外に皮膚へのダメージは大きい。電気カミソリでカミソリ負けをするようなら、切れ味のよいカミソリでそる方がよい場合もあるという。

 ヒゲそり後はきれいに石鹸を洗い流し、乾燥している時期、とくに室内に暖房が入っている時期には、肌に保湿効果のあるクリームなどを塗ろう。使いやすいものなら何を使ってもよいが、最近、皮膚科ではセラミドという角質層と同じ成分が入った保湿剤(ガルデルマ製「セタフィル」など)を使っており、セタフィルは市販もされている。低刺激で保湿効果が高い上、アレルギーの原因になりにくいという。痛みなどが長く続く場合は医師に相談してみるといいだろう。

■赤味、プツプツは早めに皮膚科で相談を

 症状がタイプ2、タイプ3のときは、セルフケアに頼らず早めに皮膚科に相談してほしい。「一見似た症状でも、使う医薬品がまったく異なることがある」(菊池院長)からである。

 例えば、タイプ2のニキビ、吹き出物に対しては、まずビタミンB2、B6を内服して肌荒れを抑えるとともに、必要に応じて抗菌剤の入った塗り薬などを用いる。それに対してタイプ3の場合は、アレルギー(かぶれ)の原因を突き止めるとともに、ステロイド剤などを用いて炎症を抑えることもある。菊池院長は「自己判断で市販の抗菌薬やステロイド剤などを用いると、逆に症状を悪化させることがあるので、できるだけ皮膚科で相談してほしい」と話している。

 フレッシャーズはもちろん、毎日ヒゲをそり続けるビジネスパーソンにとって、カミソリ負けは意外に大きな悩みだ。正しいヒゲそりの方法と皮膚の知識を持つことで、爽やかな毎日を送ってほしい。

菊池新(きくち・あらた)医学博士、菊池皮膚科医院理事長。1962年東京生まれ。87年、慶應義塾大学医学部を卒業。95年、慶應義塾大学医学部皮膚科診療科医長。96年、アメリカ国立衛生研究所(National Institute of Health)へ留学。98年、菊池皮膚科医院を開設。『そのアトピー、専門医が治してみせましょう』(文春文庫)、『Dr.菊池の金属アレルギー診察室』(東京堂出版)、『なぜ皮膚はかゆくなるのか』(PHP新書)などの著書がある。

(荒川直樹=科学ライター)

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