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住宅診断で不安を払拭 不具合を購入前に発見

2016/4/16

 一戸建て住宅を新築したり、中古マンションを買ったりするとき「ホームインスペクション(住宅診断)」というサービスを利用する人が増えている。ずさんな工事や設備の欠陥などがないか専門家に調べてもらうことで、不安を払拭したいためだ。建築知識がなければ気づかない施工不良が見つかる例も少なくないというが、どう利用したらいいのだろうか。

 相模原市に住む主婦Aさん(47)は昨年9月、念願だったマイホームを建てた。その際に利用したのが施工段階から第三者がチェックする住宅診断サービス。「素人では思い付かないところまで診断してもらえた」とAさんは話す。例えばフローリングを張る前の下地材のチェック。どれくらい水分を含むかを含水率計で計測し、このままフローリングを張るとカビの原因になるとの助言を受けた。下地材を乾かすため、フローリング工事は延期されたという。

 新築住宅は引き渡しから10年間、コンクリート基礎や柱、梁(はり)といった主要構造部分のほか屋根、外壁など雨漏りを防ぐ部分を保証する法律がある。重大な欠陥が見つかれば、売り主は修繕費用を負担する義務がある。住宅瑕疵(かし)担保責任保険(瑕疵保険)という専用保険に加入するか、保証金を供託して修繕費用を確保しておく。

■鉄筋のゆがみ多く

 しかし国土交通省によると、保険が義務づけられた2009年以降、保険会社に請求があった約4800件のうち保険金が出たのは約2800件にとどまる。保険の対象になるのは建物の基本的な耐久性に影響するような重大な欠陥で、例えば基礎や外壁に細かいひび割れがあっても対象外だからだ。認められなかった約2000件は売り主に修繕してもらえなかった可能性がある。

 法律による保証は限られる面があるため、住宅診断サービスの需要は高まりつつある。工事中の診断でよく見つかるのはコンクリート基礎の鉄筋のゆがみや、壁に入れる断熱材の偏りなど。いずれも瑕疵保険でカバーされない可能性が大きいが、鉄筋のゆがみは耐久性に響く可能性がある。断熱材に偏りがあると、結露で湿気が高まってシロアリの原因になりかねない。

 こうした施工不良は「工事が完成してから見つけるのが難しい」(住まいと土地の総合相談センター=東京・世田谷=の市村博代表)。Aさんは計8回の診断費で35万円を支出したが「引き渡し後に不具合が発生して原因を調べたりする手間やコストを考えると高くはない」と話す。

 診断サービスは中古でも利用が広がっている。東京都足立区の会社員Bさん(38)は昨年、築38年の中古マンションを買った。診断サービスを頼んだところ、片方からしか開かない窓サッシ、傾いて取り付けられた流し台の排水管、小型でパワー不足の給湯器などの不具合が見つかった。

 診断費用は5万円ほど。サッシや排水管などの不具合のいくつかは売り主が修繕してくれたため、Bさんに実質的な負担はほとんどなかった。「写真入りの報告書があったので、その後のリフォーム業者とのやり取りにも役立った」(Bさん)という。

 中古住宅は不具合が発生する可能性が高い。国交省によると、中古のトラブル発生率は旧耐震基準の一戸建ての場合で3割強に達する。中古の取引は売り主、買い主とも専門知識のない個人の場合がほとんど。欠陥があった場合の保証も十分ではないからだ。

 民法では、引き渡してから欠陥が見つかれば売り主に修繕する義務がある。ただしこれでは売り主のリスクが大きいため、売買契約書では引き渡しから3カ月以内に見つかった主要構造部分の欠陥や雨漏りなどに限って、売り主の責任にすることが多い。

■項目や方法を確認

 住宅診断は専門会社や設計事務所、リフォーム会社などが手がけている。依頼する際は報告書のサンプルを見せてもらい、具体的な診断項目や方法を確認しよう。受注実績や住宅建築に関する実務経験、専門資格があるかもチェックするといいだろう。

 診断サービスに限界もあることを知っておこう。例えば中古住宅は構造などによって目視で確認できない部分がある。さくら事務所(東京・渋谷)によると、診断で天井やサッシ周辺のしみなど雨漏りの疑いが見つかる住宅は全体の数%程度ある。しかし天井裏をのぞく点検口がなく、雨漏りしているかどうか確認ができない建物もあるという。

 新築、中古にかかわらず、マンションの診断サービスは原則として対象が専有部分に限られる。外壁や共用廊下などに一見して分かるひび割れなどがあれば指摘してもらえるが、共用部分の診断には管理組合の許可が必要。横浜市の傾斜マンションで問題になった基礎のくいの欠陥などを発見するのは難しい。(表悟志)

■中古の診断普及へ 国交省が改正法案
 中古住宅の診断サービスは今後利用が増えそうだ。国交省は買い手と売り手に住宅診断のあっせんを希望するかどうかを確認することを仲介会社に義務付ける方針で、今通常国会に改正宅地建物取引業法案を提出した。2018年の施行を目指す。中古住宅への不安を和らげられるとみている。
 ただしサービス業者は公的な資格などがなく、サービス実施後の報告書の体裁も業者によってまちまち。このため国交省はとりわけ重要な建物の主要構造部分と外壁、屋根について報告書の形式を統一する考えだ。これは売買契約の手続きで重要事項の一つとして、売り主と買い主で情報を共有する。

[日本経済新聞朝刊2016年4月13日付]

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