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新社会人の外貨運用 長期の視点でリスク考慮

2016/4/17

新社会人として働き始めたら、稼いだお金の一部を外貨で運用したいと思う人もいるだろう。日銀が1月末にマイナス金利政策の導入を決めた後、大手銀行などは円の預金金利を下げたのに対し、外貨預金の金利を相次いで引き上げた。高金利は魅力だが、外貨投資は為替変動などのリスクが付き物だ。手数料も割高なことが多い。一から外貨投資を始めるにはどうしたらよいか。専門家にコツを聞いた。

「資産運用は若いうちに始めるほど有利に資産を形成できる」。こう話すのはファイナンシャルプランナー(FP)の福田啓太氏だ。投資でお金をどれだけ増やせるかは元手となるお金の量、運用利回り、投資する期間という3つの要素によって大きく変わる。投資を早く始めて長い期間運用できれば、元手の少なさを補うことができる。

■少額を積み立てで

長期の資産運用をこれから始める場合、一部に外貨建ての資産を入れておくメリットは大きい。日銀は現在、持続的に物価上昇率年2%が維持できる環境を目指して金融緩和を実施している。これが実現すれば、物をいくらで買えるかという円の実質的な価値は目減りする。資産の一部を外貨建てで持っておけば、インフレによって円建て資産価値が目減りするのをカバーできる。「中長期的な資産防衛のために外貨を持つことは重要だ」と福田氏は指摘する。

投資に回せるお金が少ない新社会人でも始めやすいのは積み立てによる外貨運用だ。例えば毎月1万円など無理のない金額を外貨で積み立てる。投資時期を分散できるため、1度に大金を投じるよりもリスクを少なくできる。

表Aにあるように外貨資産で運用する金融商品はさまざまだが、最も初心者向きなのは外貨預金だろう。日銀のマイナス金利政策が導入されてから、外貨預金の金利引き上げなどのキャンペーンに力を入れる銀行が増えている。米ドルだけでなく、豪ドルや南アフリカランドといった新興国通貨では円預金の金利を大幅に上回る。

ただ「見た目の高金利には注意が必要だ」とFPの深野康彦氏は注意を促す。図Bの例にある通り、外貨預金の金利は確かに魅力だが、為替相場の変動が大きいと、利息が吹き飛びかねない。特に高金利の新興国通貨は為替変動が激しいため、損失が膨らむ恐れがある。長期で保有するなら、金利水準で劣っていても値動きが比較的安定している米ドルやユーロなど主要通貨が基本になるだろう。

手数料などコスト面にも注意する必要がある。外貨預金の場合は「円から外貨」「外貨から円」に転換する際にそれぞれ為替手数料がかかる。マイナー通貨になるほど手数料も高くなる。

外貨預金と性質が似た金融商品では外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)がある。海外の公社債や短期金融商品で運用し、現金に近い特徴を持つ。深野氏は「外貨預金と異なり上場株式などと損益通算できるので税金面では有利になる」と話す。

長期の運用を考えるなら、海外の国債や社債、株式などに投資する投資信託も選択肢に入る。投信は多数の投資家から小口のお金を集めてプロが運用する。特に情報を集めにくい海外の株や債券などは、投信を利用すると分散投資が簡単にできる。

積み立ては数年かけてバランス良い資産構成をつくっていくのが理想だ。本人の投資姿勢によって資産構成の比率は変わるものの、多くのFPは運用資産全体の6~7割程度は円建ての資産で持ち、外貨建ては3~4割程度までとすべきだと指摘する。リスクが比較的大きい株式は債券の半分程度の比率にとどめるのが基本だ。値上がり期待が大きい新興国の株式を資産の一部に加えても良い。

■残高の比率点検

年1度など定期的に残高の比率が大きく変化していないかをチェックしよう。比率が増えているものは一部解約し、比率が減ったものを追加購入して資産全体を元の比率に戻すことも重要だ。

外貨運用の成果を左右する最も重要な要素は為替相場の動向だ。グラフCが示す通り、年明け以降は急速に円高が進んでいる。円高時は外貨建て資産を円安時より安く買えるというメリットがあるものの、投資後に円高が一段と進むと含み損が膨らむリスクがある。FPの藤川太氏は「外貨投資は10年単位の長期視野で考えるべきだ」と訴える。外貨を長く持ち続けるには、過大なリスクは取らずに「損失を出してしまっても耐えられる金額の2倍までに持ち高を抑えると良い」とアドバイスする。

外貨投資を始めるにあたっては、国際的なニュースや出来事にも気を配る必要がある。特に重要になるのが今後の日米金融政策だ。日銀は1月末にマイナス金利政策の導入を決めたが、その後にも黒田東彦総裁は「必要な場合には追加的な金融緩和措置をとる」と語っている。日銀の追加金融緩和策は円を押し下げる要因になることが多い。

米連邦準備理事会(FRB)の金融政策では米景気の改善で早期利上げが見込める状況になればドルを押し上げる可能性が高い。一方で、世界経済の低迷が米経済にも波及するとの懸念から利上げ時期が遅くなるとの見方が広がればドル安の材料になる。

日々の経済ニュースを材料に自分なりに為替などの相場観やシナリオを描けるようになれば、世界経済を身近に感じることができるため、投資の勉強にもってこいだ。(浜美佐)

[日本経済新聞朝刊2016年4月13日付]

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