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大人の装いを上品に レースの上手な取り入れ方

宮田理江のファッションラボ

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NIKKEI STYLE

永遠の憧れとされる女優、オードリー・ヘップバーン。彼女が生涯愛したブランドが「GIVENCHY(ジバンシィ)」でした。パリらしいエレガンスを象徴する存在として、日本でも世代を超えて支持され、今は「GIVENCHY BY RICCARDO TISCI(ジバンシィ バイ リカルド ティッシ)」のブランド名でコレクションラインを発表しています。2016年春夏シーズンは、レースをふんだんにあしらったルックを提案。大人がまとうレースの装いにいざないました。

「ジバンシィ」は長年、パリコレクションで新作を毎シーズン発表してきましたが、16年春夏向けにはニューヨークでランウェイショーを開催。さらに、業界関係者だけに閉じた形式ではなく、一般客も招待する「開かれたファッションショー」となり、大きな話題を集めました。気品やクラス感を重んじながらこういった新しい試みを重ねるところにも、時代とともに歩む意識が感じられます。その老舗メゾンが見せたレースの迎え入れ方はさすがのモダンさをかおらせています。

薄物の重ね着でさわやかさを印象づける

ランジェリーを連想させるような繊細なレースを、巧みにパンツルックへ落とし込みました。あえてマニッシュ風味のパンツと響き合わせることによって全体のバランスを整えています。上質感の際立つ素材使いと、手の込んだレースが大人の色気と余裕を漂わせました。タキシードを思わせるメンズ顔のパンツが着姿を引き締めています。パンツの腰から垂らしたひもも、動きと縦落ち感を添えています。

たおやかなレースのトップスの上から、りりしいジレ(ベスト)を羽織っています。レースの見え加減を調節する上で参考にしたいアレンジです。さらに、その上にナイトガウン風の薄いシルクアウターを羽織るという、3層の重ね着。メンズライクなベストを挟む格好で、表情の異なる薄物がハーモニーを奏でました。上半身はシルキーホワイト、ボトムスは黒と、すっきりした白×黒のツートーンに抑えて、全体を落ち着かせています。軽めの羽織り物を加えての「サマーレイヤード(重ね着)」はかえってさわやかに見えるので、試しがいがあります。

印象の異なるアイテムの組み合わせが生むこなれ感

16年春夏はまばゆいシャイニー系の服や小物が脚光を浴びています。レースもシルバーメタリックで華やがせると、甘さを封じ込められます。リュクス感も加わるから、あっさりしがちな春夏ルックにぴったり。一方、ダークカラーのレースはミステリアスな雰囲気を呼び込めます。肩口が大きく開いたジレ風アウターは程よくレースを隠して、風合いの違いを引き立てています。レースは質感の異なるパートナーとのマッチングで一段と表情を深くするのです。ミニ丈のドレスと、それより少し着丈の長いアウターとの「丈違いレイヤード」が縦長イメージを引き出して、脚をきゃしゃに見せています。

はかなげムードを帯びるレースは女っぽさが濃く出ますが、ダークな色味にすれば、妖艶でアダルトな風情が立ちのぼります。ブラックはグラマラスな気分も連れてきます。静かな光沢を宿らせたレザーのジャケットを羽織ると、互いの持ち味を引き立て合って、奥深い表情が生まれます。印象の異なるアイテム同士のマリアージュという意味では、バイカー風ライダースジャケットを重ねるプランもあります。レース特有の甘さやセクシー感の逆方向から組み合わせを考えると、こなれた着姿に仕上げやすくなります。

「ジバンシィ」は1950年代初めに創業デザイナーのユベール・ド・ジバンシィ氏がパリにオートクチュールメゾンを開きました。以来、パリならではの洗練とシックを代表するブランドであり続けています。ユベールと親交の深かったオードリーをはじめ、グレース王妃やジャクリーン・ケネディ米大統領夫人なども顧客リストに名を連ねていました。2005-06年秋冬シーズンからは現在のリカルド・ティッシ氏がメゾンのエレガンスを継承しつつ、現代的な強さやフェミニンな官能美などを重ね合わせた装いを提案し、さらに評価を高めています。

レースを取り入れるにあたっては、今回取り上げたパンツやアウター、レザーなどとのミックスが甘さをカバーする上で味方になってくれます。ジーンズやパーカー(フーディー)、ブルゾン、スニーカーといった、カジュアルな雰囲気のアイテムも若々しさやメンズテイストを添えて、全体をアクティブな気分にしてくれます。

ほどよく女らしさをまとわせてくれるレースは、普段使いを重ねていくことによって、着こなしのレパートリーを自分流に広げていけます。ちょっとあっさりまとまってしまいそうな日でも、レース物を加えるだけで上品に仕上がるので、手持ちワードローブとの相性を試して、組み合わせパターンを広げていきたいものです。

画像協力:

GIVENCHY BY RICCARDO TISCI

http://www.givenchy.com/

宮田理江(みやた・りえ)
 ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報、リアルトレンドを落とし込んだ着こなし解説などを発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした消費者目線での解説が好評。自らのTV通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(学研パブリッシング)がある。
公式サイト:http://riemiyata.com/

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