働く女性のちょい飲みに 「夜スタバ」はお酒も提供
スターバックス コーヒー ジャパン(東京都品川区)は丸の内新東京ビル内にあった店舗を約1カ月かけて全面改装。アルコール類や同店限定のフードを提供する「スターバックス イブニングス(STARBUCKS EVENINGS)」として、2016年3月30日にリニューアルオープンした。
この業態は米国で2010年からスタートし、米国、英国で現在約300店舗を展開しているが、アジアでは初。5月末にはアークヒルズ店が同業態の2号店としてリニューアルオープンする予定だ。
通常のスターバックス店舗で取り扱っている商品に加え、世界各地からセレクトしたワインやビール、スターバックスイブニングスの国内店舗用に限定醸造したワインを販売する。さらに同店限定のアルコールに合うスモールプレート、スイーツなどを販売している。平日なら朝7時の開店からワインやビールを楽しむことも可能だ。
アジア初の"夜スタバ"とはいったいどんな店なのか。アルコールに合わせるスタバならではのフードメニューは、どんなものがあるのか。オープン直前の内覧会に足を運んだ。
酒のつまみはまさかの"スイーツ"
スターバックス イブニングス1号店がある丸の内新東京ビルは国際フォーラム向かいにあり、東京駅と地下で直結。有楽町駅からも徒歩3分と非常にアクセスのいい場所だ。ビル自体は古く(1963年竣工)、派手さはないが、落ち着いた雰囲気。店は1階通路の角にあり、どの入口から入ってもすぐ目に入る場所だ。店内の雰囲気は、ほかのスタバとほぼ同じ。ただこの規模の店としてはかなり広めのソファ席があり、4人掛けのテーブル席も多いような気がする。これはやはり、グループの飲み客対応なのだろう。
ビジネス街の飲み屋といえば、何はなくとも生ビール。だがカウンターにビールサーバーは見当たらない。メニューを確かめると、3種類の瓶ビールのみ。うまそうな瓶ビールだが、やはり落胆は否めない。気を取り直してまずはグラスワインを頼むことにし、つまみを探す。だがそれらしいのは、小型のパイサイズのラタトゥイユだけ。聞けば棒状のタルト風スイーツ「タルトレット」がワインに合うように開発したオリジナルのつまみだという。
たしかにスタバのスイーツはおいしいし、ワインにはドライフルーツなどの甘味も合う。だがスイーツだけで飲むのはさすがにきついのでは……。納得できない気持ちのまま、とりあえずタルトレットとワインのセットを試してみる。
最初に食べたのは、特におすすめだという「ゴーダチーズ&トロピカルズ」。ひと口めのタルト生地の部分は、普通にスイーツの甘さ。やっぱりこれで酒を飲むのはきついと挫折しかけたが、食べ進んでいくと、フィリング部分はチーズの塩味がほんのり感じられ、意外にあっさりしている。チーズの塩味とドライフルーツの甘み、わずかな酸味がミックスされて、たしかにワインと合う、といえなくもない。
ワインそのものがかなりおいしく(飲食店で100円ワインが飲めるご時世に強気な価格ではあるが)、こういう組み合わせで飲んだことがあまりないこともあり、ワインの新しい味わいを発見したような気持ちになる。ちなみにタルトレットは「カマンベール&ベリーズ」「ブラックココア クーベルチュール」が赤ワインに、「ゴーダチーズ&トロピカルズ」「ストロベリー ホワイトチョコレート」「クリームチーズ&オレンジ」が白ワインに合うとのこと。
だがそうはいっても、普通に酒を飲む気分でこの店に入り、いきなりタルトレットを薦められたら、特に男性はかなり戸惑うに違いない。なぜこのビジネス街のど真ん中で、こうしたメニューにしたのか。
働く女性が気軽にお酒を楽しめる場所は少ない
「最近は男女おしなべてどの年代も酒をあまり飲まなくなってきている。その中で唯一、酒の消費量が伸びているのが40代女性。そこに着目した」(商品開発を担当したスターバックス コーヒー ジャパンの清水拓チームマネージャー)
この年代の女性は、男女雇用均等法が施行され本格的な社会進出を果たした人が多い。そうした働く女性たちがどこで酒を飲んでいるかをスターバックス コーヒー ジャパンが聞き取り調査をしたところ、意外にも「女性が気軽にお酒を飲める場所が少ない」という声が浮上した。居酒屋やバーは一人では入りにくく、消極的な選択としてカフェで軽く飲んでいる人も多かった。「そこに勝機があるのではないかと考えた」(清水氏)。
ターゲットは広くとらえるほど、ぼやけてしまう。そこで30代から40代の働いている女性にターゲットを絞り、「仕事を終えて帰宅する途中で軽く飲みたくなったとき」「待ち合わせしながら、軽く飲みたいとき」といった利用シーンを想定。食事前のアペリティフを楽しむ場所なので、"小腹満たし以下"のボリュームで、彩りが豊かで小さく、スタイリッシュにつまめるフードを考案したという。
もうひとつの狙いは、バーやレストランよりも、カジュアルにワインを楽しめる場所にすること。スターバックスはコーヒーをカジュアルにアレンジして楽しむ飲み方を提案してきた。コーヒーとワインは共通する部分が多いと考え、コーヒー感覚でスイーツと一緒に気軽にワインを楽しんでもらうことも、タルトレットという形にした理由だという。
ちなみにグランドメニューとして提供しているワインは、スターバックス イブニングスの日本店舗のためだけに醸造されたオリジナル。5月末の2号店オープン前は世界中ここだけで飲めるワインだそうだ。「そのほかにはプレミアムラインとして、さまざまなワインをほぼ月替わりでメニューに載せていくことを検討している。月一で利用すれば毎回、違うワインに出会えるようにしていきたい」(清水氏)という。
(ライター 桑原恵美子)
[日経トレンディネット 2016年4月8日付の記事を再構成]
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