一晩寝たらすっきり…　ポジティブな父に似てきた

著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回は女優の南沢奈央さんだ。

――お父さんは娘が出演した番組を欠かさず見ているそうですね。

「番組をDVDに取っておいて、後で感想を言ってくれます。『あのシーンはあまり……』とダメ出しされることもありますね。女優の仕事を始めたころは周りから色々とアドバイスをもらえたのですが、10年くらい経験を積むと、指摘する人がいなくなってしまうのですね。身近に率直に意見を言ってくれる人がいるのはありがたい」

「中学3年生の時にスカウトされてこの世界に入りました。1年くらい悩みました。高校受験を控えており、それに人の前で芝居をしたり話したりするのは得意ではありませんでしたから。最終的には父の『やりたいのならやりなさい』の一言で決めました。心配だったでしょうが、私がやると決めてからは誰よりも応援してくれています」

――ご両親と同じ大学へ進みました。

「両親とも立教。大学で出会って結婚しました。2人ともスキーが趣味です。母が父の勉強を手伝っていたようで、父は『お母さんのおかげで単位が取れた』と言ってます。キャンパスの話を聞いて、絶対行きたいと思いました。女優業にも役立ちそうなので、現代心理学部映像身体学科を受験し合格しました。両親はとても喜びましたね」

「3年前に卒業しましたが、いまでも時折、東京・池袋のキャンパスに行きます。学生食堂の雰囲気がすてきなんです。古いレンガづくりで英国映画に出てきそう。両親といっしょに足を運んで、思い出話を聞くのが楽しみです」

――科学番組のナビゲーターを務めていますが、学生時代は科学が苦手だったとか。

「周りに理科系の人間がいなかったせいでしょうか。ただ、番組を始めてから興味がわいてきました。収録をしながらいろんな知識を吸収しています。新聞の科学ニュースも気になりますね」

「もともと勉強は好きで、今は仕事で使えるよう韓国語も学んでいます。これまで親から勉強しなさいと強制されたことはありません。リビングルームで家族に囲まれて勉強することが多かった。自然に勉強が好きになるよう仕向けた親に感謝しています」

――お父さんとの京都旅行が印象深いそうですね。

「初めて二人きりで旅行をしました。ちょうど大学に入ったぐらいのときです。女優と学業との両立が大変で、つい弱音を吐いてしまいました。父は大学で、できる限り同じ世代の人たちと時間を過ごすことが将来役に立つと、励ましてくれました」

「父はポジティブで、それほど悩まない。引きずらないタイプです。私はもともと引きずるタイプだったのですが、最近は一晩寝たらすっきりします。これも父の影響でしょうか」

［日本経済新聞夕刊2016年4月12日付］