落とし穴がいっぱい 「50平米未満」のマンション不動産コンサルタント 田中歩

国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の総世帯数は2019年の5300万世帯をピークに減少に転じます。しかし、単独世帯数に限っていうと30年まで上昇を続ける見込みで、ピークに達する30年には1870万世帯を超えると予想されています(グラフ)。筆者の肌感覚としても、独身の方が住宅取得の相談に訪れることが、かつてに比べて多くなったと感じています。

増えるコンパクトマンション

実際、単独世帯数の増加や景気低迷で可処分所得の伸びが抑えられていることなどを背景に、比較的小さい規模のマンション供給が増えています。ここ数年、専有面積が60平米台以上のいわゆるファミリータイプのマンション供給数が減少し、50平米台以下のコンパクトマンションが従来に比べて多く供給されています。

三井住友トラスト不動産が東京カンテイの協力を得て12年に発表したデータによると、東京23区内、大阪市、名古屋市で供給された専有面積60平米台以上の新築マンションの戸数は、10年前は12万6876戸でしたが、現在は5万6592戸にまで減少。一方、50平米台以下の戸数は10年前が3万3860戸、現在が3万4113戸とわずかに増えています。

総供給戸数に対するシェアを見ると、60平米台以上は78.9%から62.4%に減少、50平米台以下は21.1%から37.6%に大きく上昇しています(表)。

これは12年の調査なので、おそらく現在は50平米台以下の新築マンションがもっと多く供給されているのではないでしょうか。当然、50平米台以下の中古マンションの供給も徐々に増えてきていると思います。

こうした中、多くの独身の方がコンパクトマンションの購入相談で筆者の元を訪れます。そこで必ずお話しするのが、税制のお話です。マンションに限った話ではありませんが、建物の床面積が50平米を切るものについては、各種の税制特典の恩恵が受けられないのです。

まずは住宅ローン控除。これは、一定の条件のもと、毎年末のローン残高の1%相当額が10年間にわたって所得税から控除されるという特例です。この特例を受けるための条件の一つとして、床面積が50平米以上というルールがあります。

仮に2000万円を金利1%、35年間元本均等返済で借りた場合、約170万円の税金が戻ることになります。170万円とはかなり大きな額ですよね。ところが、床面積が50平米未満ですと、この特例は使えません。

住宅ローン控除以外にも……

次に登録免許税。所有権移転登記や抵当権設定登記を行うときにかかる税金で、これにも税金が安くなるためのルールがあります。

条件の一つに、床面積が50平米以上という規定があるのです。例えば、建物の固定資産税評価額が500万円だとすると、50平米以上ならば0.3%の特例が適用されるため、税額は1万5000円になります。一方、50平米未満だと本則の税率2%が適用されるため税額は10万円となります。

また、住宅ローンを組んで家を購入する場合、抵当権設定を行いますが、それに伴い登録免許税を支払います。このときにも条件の一つとして床面積が50平米以上のものについては、借入金に対して0.4%かかる登録免許税が0.1%に減額されます。2000万円借りるのであれば、税額8万円が2万円に減額されるというわけです。

不動産取得税も同様に、一定の条件の下、床面積50平米以上240平米以下だと税金を軽減してもらえるルールがあります。やはり、50平米未満ですとこの恩恵を受けることができません。

住宅を取得する際に、両親や祖父母から贈与を受けた場合、一定額について贈与税が非課税となるルールがありますが、これも適用される条件の一つに、床面積が50平米以上240平米以下という規定があります。

このように、かつてに比べて供給数が増えた床面積50平米未満の住宅は、各種の税制特典が受けられないという事実があるのです。

ここで、忘れてはならないもう一つ大きな落とし穴があります。それはマンションの床面積表記です。

登記簿上の面積の確認を

通常、マンションの床面積の表記は「壁芯面積」といって、壁の中心の内側を計測した面積となっています。ところが、税制上の恩恵を受けるための面積表記は、登記簿上の面積(内のりの面積)のことを指すのです。

不動産業者の物件資料やウェブサイトに載っている床面積は、壁芯面積なので登記簿上の面積より大きく表示されます。つまり、物件資料ではマンションの床面積は50平米以上と記載されていても、登記簿上の面積は50平米未満であることが多々あるということを覚えておきましょう。

ですから、気に入った物件が出てきたら必ず登記簿上の面積も確認してください。各種税制の特典を利用できると思っていたのに、結果として利用できないというトラブルは、結構、多く発生しています。

田中歩(たなか・あゆみ) 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。戸建て人気上昇エリアの中央線・京王線・東急東横線沿線に物件を持つ方へ、不動産売却のコツをお教えするセミナーを4月24日(日)に開催。詳しくはhttp://www.sakurajimusyo.com/semina_160424まで。
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