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難聴は脳のトラブル ストレスで自律神経に乱れ

日経ヘルス

2016/5/29

PIXTA
日経ヘルス

耳の構造は複雑で機能も繊細なため、突発性難聴、低音部型難聴、メニエール病のいずれも詳しい発生機序は分かっていない。しかし、「背景に寝不足、疲れ、ストレスがあるのは間違いない。これらが脳の自律神経の働きに影響を与え、発症に関わっていることが研究で明らかになってきた」(JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科の石井正則診療部長)。

(イラスト:sino)
ストレスや疲れが日常的になると交感神経の興奮が続き、その結果、耳の聞こえにも影響。過敏性腸症候群、円形脱毛症、うつ病という不調が現れることもある

難聴は耳の病気だが、もとをたどれば脳のトラブルなのだ。「疲れやストレスを感じると、自律神経は戦闘モードの交感神経が優位に。常にストレスを感じているとリラックスモードの副交感神経への切り替えがうまくいかず、交感神経の緊張が続いてしまう。それによって脳全体も興奮し、心臓の動悸が激しくなるなど臓器にも負荷をかけることになる」(石井診療部長)。

本来ならこれは異常な事態。しかし、ストレスが日常化している人にとってはこの異常が当たり前として恒常性を保とうとする。「それを『アロスターシス』というが、いつかは体に無理がくるため、その状態が破綻する。突発性難聴、低音部型難聴、メニエール病も、アロスターシスの破綻によって引き起こされる」と石井診療部長は話す。

また、難聴に伴う耳鳴りは、聞こえが悪くなったために、脳が聞こえの感度を上げることで生じる。いわば脳の過剰反応によって作りだされる音だ。「そのため、脳の興奮が続き、脳が疲れたときに耳鳴りも増悪しやすい」と石井診療部長。

難聴、耳鳴りを伴う病気の改善には、適切な治療を受ける一方、心と体をリラックスに導くようにストレスを調節するなど、生活習慣の改善も重要だ。

■一時的な聞こえの悪さは耳を休めて治す

(イラスト:sino)

耳の病気以外でも、難聴を招くことがある。その一因が騒音だ。「気をつけたいのが10~20代で急増中の『スマホ難聴』ともいわれるイヤホンなどの多用による難聴。

電車内の騒音は70~95デシベルで、その中で音楽を聴く場合、音量が95デシベル以上になっていることもある。85デシベル以上は人の耳には危険な音量といわれる。加齢による聴力の低下を早める原因になる」と国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科の中川雅文教授は話す。

(イラスト:三弓素青)

ドライヤーやサイクロン式掃除機など家電製品の中にも、85デシベル以上の音を出すものがあり注意が必要だ。

騒音による聴力の低下には、内耳の蝸牛にある「有毛細胞」が関係している。150万本ほどが整列している、この細胞の“毛”が音の聞こえに重要な役割を担っているが、騒音でダメージを受けやすく、抜け落ちてしまうのだ。

「しかし、48時間で毛は再生するため、一時的に聞こえが悪くなっても2日間耳を休ませれば聴力は回復する。騒音による難聴を防ぐには、1週間のうち、せめて土日は大きな音を聞かないようにしたい。また、イヤホンで音楽を聴くなら1日1時間以内に。電車の中では聴かない。音の大きな家電製品を使うときには、耳栓を」と中川教授はアドバイスする。

■この人に聞きました

石井正則医師
JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長。東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科医長などを経て、現職。スタジオ・ヨギー公認ヨガインストラクターとしても活動中。著書に『耳鳴りがスッキリする呼吸がわかった』(マキノ出版)など。「耳鳴り、難聴の改善にはがんばり過ぎにも注意して」
中川雅文医師
国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科教授。順天堂大学医学部客員准教授などを経て、現職。耳とコミュニケーション研究の第一人者。著書に『耳がよく聞こえる!ようになる本』(河出書房新社)など。「加齢による難聴は、動脈硬化などによる血流の悪化も原因。有酸素運動で体の循環アップを」

(ライター 海老根祐子、構成:日経ヘルス 羽田光)

[日経ヘルス2016年5月号の記事を再構成]

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