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スリップウェア 見慣れぬ文様、この器は何?

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20センチ四方ほどの赤い土の板に、スポイトで白い線が描かれていく。穏やかな春の日差しが差し込む工房で、白いくの字や波模様がぷっくりと盛り上がっている。焼き上がれば、スリップウェアと呼ぶ器になる。

鳥取県岩美町の「クラフト館岩井窯」。陶芸作家の山本教行さんがこの土地に窯を開いたのは1971年、22歳の時のこと。その年、師が東京で1枚の皿を買ってきた。

何気ない日用品に美を見いだす「民芸運動」の人々が愛した器、スリップウェアだ。その一人、陶芸家のバーナード・リーチに17歳で出会い、陶芸の道に進んだ山本さんはたちまちとりこになった。にわか作りのレンガの窯で見よう見まねで試作した。以来、その制作に打ち込んできた。

迷うことなく白い線を描いていく山本さん。手作業で生まれる模様は、一つとして同じものはない。「迷ったらだめ。自由に心のままに描くもの」と山本さんは言う。

分厚い皿に、様々な文様が描かれている。一筆書きの大胆な線もあれば、規則的なしま、細かいマーブル模様のような精緻なものもある。スリップウェアとはクリーム状の土(スリップ)で装飾した器のこと。英国では18世紀から19世紀にかけて主にオーブン皿として使われた。パイが焼き上がったら、そのまま食卓に載る。

実用の器だったので、過剰な装飾は不要で、素早くたくさん制作できる文様が施された。

「食器に陶器を使う以前、豊かな人は銀、貧しい人は木の器を使っていたのだろう。16~18世紀に海外から陶芸の技術が入り、スリップウェアが広まったことで食器のバラエティーも豊かになった」と、この分野に詳しいライターの渋川祐子さんは説明する。

だが19世紀以降、ウェッジウッドのような磁器に取って代わられる。同じ技法でも、芸術的価値を認められていたのは「トフトウェア」と呼ばれる飾り皿だった。動物などの具象的なモチーフの器だ。英国で「スリップウェア」といえばそちらを指し、普段使いの食器は忘れ去られた。

その日常の素朴な雑器を再発見したのは、民芸運動の人々だった。柳宗悦と陶芸家の富本憲吉が洋書で知り、バーナード・リーチ、濱田庄司、河井寛次郎らも続いた。

「日本人のスリップウェアを見る目は欧州の人とは明らかに違う」。東京・目白で「古道具・坂田」を営む坂田和実さんは言う。「欧州は遠近法などの技術に基づいた骨格のしっかりした美術を評価してきた」。だが日本では千利休が朝鮮の雑器を愛用したように、はっきり個性を主張する美術工芸品よりも、空間と無理なく調和するものが好まれた。さりげない美しさを好む感性が、無意識のうちに受け継がれてきたのだろう。

1970年代、坂田さんが買い付けで渡英したときのこと。知人に連れられた道具店でスリップウェアを2枚見つけ、迷わず買った。

以来、渡英のたびにスリップウェアを探したが、その存在すら知らない道具屋がほとんど。あるとき、スリップウェアのピッチャーを買ったら、英国人の友人が仰天した。「こんなの英国の焼き物じゃない。だまされているから、すぐ返しに行くんだ」

こうして日本人がスリップウェアを買い集めた結果、本国より日本での数の方が多くなったともいわれる。今や「英国の人も興味を示すようになった」(坂田さん)。

スリップウェアを作る日本人の若手作家も多い。ベテランの山本さんは言う。「歴史の中では誰が作ったかという意義は消える。100年後でも自然さを感じるような器を作りたい」

[関優子]

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