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相続トラブル百科

トラブルない確実な贈与 安易なコストカットは危険 司法書士 川原田慶太

2016/4/8

 人間誰しも「お金が減る」「資産がマイナスになる」という事態は避けたいと思うものです。極力コストをかけずに済ませようとするわけですが、贈与をめぐるトラブルについては、かえってそこが落とし穴になる場合もあると思います。

 110万円の基礎控除を超える財産をもらったときには、金額に応じて最低でも10%、最高55%もの贈与税が課せられます。高税率をきらって家族間の内々で表に出ないよう、預金口座間で資金移動を行っている家庭が結構あります。しかし、税務署の調査が入ると贈与税については9割以上ものケースで申告漏れが見つかっており、その大半が預貯金の移動を申告していなかったケースであることを前回、お伝えしました。

 こうしたトラブルを避けるためには、やはりある程度のコストをかけてでも、きちんと対応したほうがいいのではないかと思います。例えば税金の相談や申告にかけるコストです。

 国税庁の発表によると、贈与税の調査で「アウト」となった家庭の85%以上が無申告の状態でした。「申告をしていたけれど間違っていた」ところではなく、「そもそも申告しなかった」ケースが狙い撃ちされていることが明らかです。

 申告することを前提に、資産税の手続きに詳しい税理士などの専門家に相談するだけでも、リスクをかなり軽減できるでしょう。相談コストをある程度しっかりかけ、生兵法で大ケガをしないようにすることが必要です。

 適正な申告をすれば、住宅の取得資金や教育資金、子育て資金などについては贈与税の大きな非課税枠を使うこともできます。こうした制度を利用することについてはメリット・デメリットがありますが、各家庭ごとにいくらの負担までなら許容できるのかを探り、納得できる範囲で専門家に相談するコストをかけ、ケースによっては納税コストもかけたほうが選択肢も広がります。

 もうひとつ、後日に憂いを残さないために、法律的な面についてもコストをかけることをお勧めします。

 例えば、単純に口座間で預金を移動させただけでは、正式に贈与と認められないケースもあります。あげる人ともらう人の間で「あげます」「もらいます」という意思表示があったことを明確にしないと、贈与契約は成立しないからです。

 それを明確にするには契約書などの書面を整える必要がありますが、書面の内容がしっかりと要件を満たすものかどうかは、専門家にチェックしてもらったほうが確実でしょう。また、贈与契約書をさらに確実なものにするためには、公証役場などで日付の証明をしてもらう必要があり、これにもコストがかかります。

 目先のコストがかからないというのは魅力的なのですが、それだけを優先させるべきではありません。問題は、トータルで考えた場合にどれだけのリスク、つまり「将来のコスト増の危険性」を抑えるかという点にあるといってもよいでしょう。法律や税の専門家に相談するなどの時間やお金のコストを惜しまないことが、将来のコスト削減につながる可能性があるということを覚えておいてください。

川原田慶太(かわらだ・けいた) 2001年3月に京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験に合格し、02年10月「かわらだ司法書士事務所」を開設。05年5月から「司法書士法人おおさか法務事務所」代表社員。司法書士・宅地建物取引主任者として資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数務める。

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