歓声が上がる黒糖レーズン蒸しパン 野口真紀さん
材料をすべて混ぜたら15分おくのがコツ
―― 一つ一つ、膨らみ方が違うんですね。
そう、蒸しパンって本当にかわいいですよね。ボウルに材料を全部入れて、ホイッパーでひたすら混ぜていくだけなので、慣れたら5分で準備完了します。粉をふるったりする必要もないですし、本当に簡単ですよ。
コツは、材料を全部混ぜた後に、15分ほど時間をおくこと。こうすることで生地がなじんで、レーズンも少しふっくらします。そして、スプーンでプリン型に流し入れて15分ほど蒸します。
ホットケーキミックスでももちろん作れますが、このレシピなら、ミックスを使うまでもないという感じでしょう? 出来上がりの形が作っているときとだいぶ違うので、子どもたちは喜びますよ。保育園のイベントなどでも、よくこの蒸しパンは紹介しています。
● 材料(約10個分)
小麦粉 200g
べーキングパウダー 小さじ2
黒砂糖(パウダータイプ) 100g
牛乳 1/3カップ
レーズン 40g
卵 1個
● 作り方
1. ボウルに小麦粉、ベーキングパウダー、黒砂糖、卵、牛乳を入れて、全体をよく混ぜる。
2. 1にレーズンを加えて、15分ほどおいて生地をなじませておく。
3. プリン型などの容器に薄紙をしいて、生地を8分目まで入れる。
4. 蒸気の立った蒸し器に入れ、15分ほど蒸す。
保育園では"硬派"でも実は食が細い息子
―― 野口家には、おやつに関するルールは何かありますか。
あまりジャンクなものを食べてほしくないので、普段のおやつはヨーグルトにジャムをかけたものくらいでしょうか。うたの水泳の練習スケジュールの都合もあって、わが家は夕食が夕方5時前後と早いのです。夕飯を食べたら、何を食べてもいいよ、ということになっていて、2人とも食後のアイスクリームが大好きですよ。
5歳になる息子のたおは、もともと食が細くて、おやつを食べてしまうと夕食にものすごく響くため、3時のおやつは食べさせないことのほうが多いです。お姉ちゃんは小さいころから何でもよく食べましたが、下の子は離乳食のときからあまり食べなくて、しかも時間がかかるんです。
―― 何か食べやすくするような工夫をしていますか。
量をたくさん食べられないので、品数を増やすようにしています。もともと朝は必ず7品目と決めています。プチトマト1つでも1品目に数えて、チーズとか果物を入れていけば割とすぐに7までいきます。お味噌汁なんて優秀で、具を3種類入れたらそれで3品目になりますよね。お味噌もカウントしていいくらい。
それらを少しずつ、たおは1時間近くかけて食べています。ところが保育園に行くと、カッコつけてワーッと食べて「おかわり」と言ったりしているようです。家の内と外で、キャラが違うの。外でカッコつけているんですよ。保育園では「硬派なたお」で通ってますから(笑)。
放っておいても10代になれば男の子は食べるようになる、とよく聞きますが、毎日のこととなるとなかなか放っておけないものですよね。今日一日であなた、どれだけ食べたの? と思ったりもしますが、基本的にはなるようになるとあまり気にしていません。
撮影の後は、近所の子どもたちやママ友を呼んで夕食
―― 野口家のごはん、おいしいはずなのに。
子どもにとっては、うちのごはんがおいしいだの、そういう意識はあまりないんじゃないかな。ただ、母親の職業が料理研究家だということはちゃんと分かっています。保育園の先生にもいつも「今日はお母さん、何品作るの?」などと聞かれているようですよ。先生にも友達にも「うちにごはん食べに来ていいよ」と言っているようですし。
さすがに先生方は食べに来ませんが、子どもたちはよく来ますよ。マンション内でも子ども同士で仲がいいので、よく夕飯を食べに来たりします。撮影があった日でわーっと料理が並んだときなどには、みんなを呼んで食べてもらったりとか。
編集していても「つまらないなー」と思う自分がいた
―― 料理関係の仕事をやりたいとずっと思っていたのですか。
料理することはずっと好きでした。母が料理上手で、私は台所に入って手伝いをしたり、料理を見たりするのが好きだったんです。ですから、20歳になったときにはごく自然に、たいていの基本的な料理は作れるようになっていました。
仕事としては、料理雑誌の編集をしたくて。ところが、いざ編集者になってみると「つまらないなー」と感じる自分がいたのです。「私が楽しいと感じられる仕事じゃないんだな」と、5~6年やってみて気づきました。
まず私は文章を書くのが死ぬほど下手で。上司にいつも怒られていました。「ここがヘン」と言われても、いったい何がおかしいのかが分からない。これはダメだと思いました。一方、料理は「おいしいか、まずいか」じゃないですか。私にとってそれは、ものすごく分かりやすかった。やっぱり自分で作るのも好きでしたし。
それである日、私も料理を教える側になろうかなと思ったのです、ずうずうしくも(笑)。それから本格的に学校に通って基礎を学びました。
料理研究家に休みはない
―― この仕事についてどう思っていますか。
今は、自分にはこれ以外にないかもしれないな、と思いますね。それに仕事があってもなくても、365日ごはんを作らなきゃいけないし、うちの子どもたちはとりわけ外食が嫌いなので、家で作るしかない。私も世のお母さんたちと同じように、同じ食材で目先の変わるメニューを毎日考えたり、今日は冷蔵庫にあるものだけで頑張ろうとやってみたりしています。
―― 野口さんの場合はそれにプラスして仕事でも料理を作っているわけですよね。
そうなんです。下の子を出産して2週間後からもうずっと働いています。生まれる2週間前まで仕事をして、生んで2週間後には本の表紙撮影をしていました。『子どもといっしょに家ごはん』を出したときです。その撮影後は「あ、もう仕事できるんだ」ということになって、以来、皆さん普通に仕事をくださるようになって。だから母に来てもらったりしてずっと働いています。フリーランスには、産休も育休もありませんしね。
―― 体力とモチベーションがないとできないことですね。
そうなんです、本当に。規則正しい生活をしていないと続けられません。100%元気じゃないと、この仕事はできないのです。ですから基本的には子どもたちと一緒に、夜10時ごろには寝てしまいます。
私は本当に、料理研究家として活躍なさっている方々を心から尊敬しています。皆さんの目には私も同じ料理研究家に見えるかもしれませんが、私などは全然、まだまだです。スーパーウーマンという言葉はそういう素晴らしい料理研究家の方々のためにあるとさえ思っています。
だってどなたも料理はもちろんのこと、お仕事でも私生活でもセンスが良くて、掃除もピカイチ上手、子育ても立派にこなし、そしていつまでもお美しい。これを何十年も続けるその精神力とパワー……本当にね、ものすごく体力と気力が必要です。先達を見ていると、私も努力し続けていかなくては、と心から思うんです。休んでいるヒマはないな、と。
でもね、先日インフルエンザにかかったんですよ、一家で。1週間ほど寝込みました。私、普段は風邪も引かないんです。だから、寝込むのなんて12年ぶりくらいでした。いやー、良かったですねー、何もしないで休むのって(笑)。とはいえ、料理はその間もずっとしていましたし、もちろん仕事には支障だらけでしたので、回復した後は土日返上で仕事をしていますけどね。働くママのつらいところです。
料理雑誌の編集者を経て、料理研究家として雑誌、書籍、広告などで広く活躍している。13歳の女の子と5歳の男の子、そして料理写真を中心に活躍するフォトグラファーの野口健志さんの4人家族のごはんを毎日作っている。主な著書に『やさしいたのしいこどものおやつ』(エクスナレッジ)、『子どもといっしょに家ごはん』(日東書院)、『おいしい毎日 おしゃれな明日 自分らしく暮らす衣食住のヒント68』(KADOKAWA)。最新刊は、『ecomom』(日経BP)で10年続いた連載をまとめた『野口さんちの365日のおかず』(KADOKAWA)。
(文 Integra Software Services)
[日経DUAL 2016年3月18日付記事を再構成]
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