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ちまたでは今、どんなビジネス書が売れているのか。日本を代表するオフィス街の書店を探訪しつつ、その街その時々の売れ筋本を定点観測してみたい。初回に取り上げるのは東京・大手町。そのほぼ中心にある紀伊国屋書店大手町ビル店だ。

売れ筋は『FinTech 2.0』と『粉飾決算』

「この棚もこちらの棚もすべてビジネス書。どこの平台にもジャンル別にそれぞれの売れ筋やおすすめ本を並べています」。紀伊国屋大手町ビル店でビジネス書コーナーを担当する店員の一人、西山崇之さんはこう話す。普通の大書店とは大きく異なり、ここでの主役は小説や読み物、タレント本などのベストセラーではない。経済、金融、ビジネススキルなどと分類された多彩なビジネス書だ。

これほど膨大なビジネス書の中で、何が売れているのか。西山さんによれば、楠真『FinTech 2.0』(中央経済社)と浜田康『粉飾決算』(日本経済新聞出版社)だという。前者はフィンテックに詳しい野村総合研究所理事の楠氏が金融とIT(情報技術)が融合する未来図を展望した一冊。「この辺は多くの銀行の本社機能が集中しているため、こうした本への関心が高い」と西山さんは言う。

一方の『粉飾決算』は長年公認会計士として会計監査に携わってきた浜田氏が、昨年発覚した東芝の会計不祥事をはじめ長銀や三洋電機の粉飾の実態を具体的な監査手続きにまで踏み込んで整理・分析し、監査と内部統制の問題点をえぐり出した内容。450ページを超える大著だ。

週間ランキングはちょっとヘン!?

同店の先週(3月28日~4月3日)のベストセラー(総合)は、西山さんの実感とは違った本が上位に食い込んでいる。弁護士の久保利英明氏の本、元東大総長で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏の本はいずれも3月の新刊だが、紀伊国屋書店全店のベストセラーでは上位に上がっていない。「このビルも含めて大手町には弁護士事務所が最近増えている」と西山さん。久保利氏の事務所は日比谷だが、コンプライアンスや企業法務に強い同事務所が大手町ビル店の品揃えの特徴を見込んでまとめ買いしていったらしい。小宮山氏が理事長を務める三菱総研は長らく大手町に本社があった(現在は永田町)ため、同店とのつき合いが深く、こちらもまとめ買いがベストセラー上位に顔を出した理由のようだ。

(1)志は高く目線は低く久保利英明著(財界研究所)
(2)オレがやる!「負けないリーダー」の仕事術長野恭彦著(生産性出版)
(3)“多様なナンバーワン”作り小宮山宏著(財界研究所)
(4)なんでも英語で言えちゃう本青木ゆか著(日本経済新聞出版社)
(5)幸せになる勇気岸見一郎・古賀史健著(ダイヤモンド社)

(紀伊国屋書店大手町ビル店、2016年3月28日~4月3日)

それでもこの2冊も含め総合ランキングのベスト5がいずれもビジネス書かビジネス関連書なのは、大手町の書店の特徴を大きく映している。2位の『オレがやる!「負けないリーダー」の仕事術』(生産性出版)は日本生産性本部などで人気講師の長野恭彦氏によるミドル向けの仕事術を説いた本。会社の中で生き抜いていこうとするミドル層への応援歌といえる内容だ。大手町ビル店は「新入社員向けより、課長さんなど向けのリーダーシップ本が売れる」(西山さん)と言い、その特徴を強く反映したこの店らしいベストセラーだ。4位には英語、5位にはアドラー関連本が食い込んで、このところのグローバル志向、アドラーブームを映した売れ筋になっている。

(水柿武志)

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