花開くウエアラブル機器 身近なグッズがセンサーに
ウエアラブル機器の市場が急拡大している。調査会社GfKジャパンによれば、15年の市場規模は前年比95%増の130万台と、ついに100万台の大台を突破し、普及期に入った。
けん引役になっているのが健康系の機器だ。主流は歩数や活動量を測れるバンド型や時計型で、ダイエットや健康志向の消費者に受けている。最近では、メガネや衣料、シューズといった、さまざまな形状のウエアラブル機器の開発も進み、まさに百花繚乱(りょうらん)だ。
計測できる内容も、従来に比べて格段に増加。歩数や活動量といった基本情報だけでなく、脈拍(心拍)や呼吸、体の動きをセンサーで捉え、集中の度合いやストレスなどの精神状態を可視化できるものまで出てきた。
なかでも、対応機器が一気に増えているのが「脈拍(心拍)」だ。例えば、セイコーエプソンのGPS内蔵腕時計「WristableGPS SF-850」は、高精度の脈拍センサーを使って心拍をリアルタイムに把握でき、興奮状態なのかリラックス状態なのかといった、"内面"の様子までわかる。
従来、心拍を捉えるには胸部にバンド型のセンサーを付けるのが一般的だったが、SF-850なら時計を腕に巻くだけで済み、「胸部に付けるタイプと測定精度はほぼ変わらない」(エプソン販売)という[注]。1日のうち、いつ興奮(緊張)していたのかがひと目でわかり、生活スタイルの改善にも役立ちそうだ。脈拍の情報などから、睡眠の質も測定可能。ランニングなどのトレーニングから日々の健康管理まで幅広く使える。
"内面を測る"ための機器は、さらに進化する。次の注目株は「呼吸」を測れる機器だ。
東京大学発のベンチャー、Xenomaが開発中の「e-skin」は、伸縮性のある生地にゆがみを認識するセンサーと配線を埋め込んだウエア。着るだけで体をどう動かしたかを検知でき、「胸回りの動きなどから呼吸の状態を捉えることも可能」(Xenoma)という。呼吸を解析すれば、日常の心理状態などを把握できる可能性もある。e-skinはプロトタイプの段階だが、2016年中の実用化に向けて開発が進んでいる。
また、靴にセンサーを仕込めば、体の不調を早期発見できる可能性まで秘める。富士通が開発中の「次世代型センサーシューズ」は、中敷き部分に圧力や加速度を計測できるセンサーを内蔵。「足の動きや歩き方をデータ化できる」(富士通)という。健康管理や生活改善への応用が主に想定されているが、歩き方で病気の前兆を発見できるという研究も大学などで進められており、将来はヘルスケア分野で幅広く活用されそうだ。
以下で、さまざまなセンサー内蔵のグッズを紹介する。
LEDで睡眠の質を向上する
米Inteliclinicの「NeuroOn」は脳波や眼球運動を測れるアイマスク。LED光で睡眠の質を高める機能を備える。価格は299ドル、日本からも注文可能。
疲労や集中の度合いが分かるメガネ
ジェイアイエヌの「JINS MEME ES」は眼電位センサーで目の動きを検知し、疲労や眠気がわかる。さらに、加速度・ジャイロセンサーも備える。価格は3万9000円(税別)。
脈拍を常時モニタリング
fitbitのFitbit Blazeは脈拍(心拍)を測定する機能を備えた高機能スマートウォッチ。GPSは搭載していない。カラーのタッチ画面を採用し、操作性が良い。日本での発売時期は未定。
ベルト型スマートデバイス
ベンチャーのSassorが開発を進めるベルト型デバイスが「TANZEN」。バックル部に内蔵した加速度・ジャイロセンサーで体の動きを計測し、ゆがみの改善に役立てられる。遊びながら体幹を鍛えるゲームも開発している。
センサーを編み込んだウエア、猫背も検出
グンゼとNECが開発した「衣料型ウェアラブルシステム」は導電性繊維をインナーに加工し、姿勢の変化を捉えられる。消費カロリーや歩数なども計測可能。2016年中にスポーツ施設に展開し、2017年初旬には市販化される見込みだ。
速度がわかるスポーツシューズ
アンダーアーマーの「SpeedForm Gemini 2 RE」は靴底にセンサーを備え、歩数や距離などを測れる。軽量で、シューズとしての機能も充実。米国では発売済みだが、日本展開は未定。
(日経トレンディ 森岡大地)
[日経トレンディ 2016年5月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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