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資産運用、口座選びで成果に差 株式はDC優先で

2016/4/10

長期投資は運用資金を様々な資産に分散するのがセオリーだ。これに加えて最近注目を集めているのが、株式や債券などをそれぞれどんな手段・制度で運用するといいのかという考え方。背景には日本でも確定拠出年金(DC)といった税制優遇の仕組みが整う一方、マイナス金利政策で利回り商品の運用環境が厳しくなっていることがある。

「海外では常識のアセット・ロケーション(資産の置き場)が日本でも重要になってきた」と話すのは投資教育家の岡本和久氏。DCや少額投資非課税制度(NISA)、通常の証券口座、預貯金口座などから資産の置き場として最適なものを選べば運用成果の向上が期待できるという。

ただしアセット・ロケーションの前にやることがある。最初に考えるのは当面必要な資金の確保。突然の離職や病気などに備える生活防衛資金(生活費の半年~2年程度がメド)のほか、4~5年以内に予定されている教育費などだ。すぐに引き出せるように預貯金で備える。

必要な資金を確保した残りが運用資金で、どんな資産にいくら配分するかというアセット・アロケーションが次のステップだ。自分がどれくらいの損失に耐えられるかを踏まえ、長期の期待リターンは大きいがブレも大きい株式などの積極運用に充てる資金と、期待リターンは劣るがブレが小さい債券などの慎重運用に回す資金に分ける。

グラフBは年金向け助言をする格付投資情報センター(R&I)の川村孝之フェローが、国内外の株式と債券を例に作成したおすすめ配分。10年超の長期で見た年率期待リターンで3%と5%のケースだ。大幅下落局面での損失のメドは株の比率が高いほど大きくなる。

■国内債券には注意

ここから先が具体的な商品選びと、置き場を考えるアセット・ロケーションになる。老後に備える長期投資は低コストのインデックス(指数連動)型投資信託を中心にするのが基本。ただ国内債券は要注意だ。R&Iはマイナス金利導入で金利が軒並み低下したことを受け、国内債券の期待リターンを従来の0.8%から0.4%に半減させた。投信のコストに見合うかどうか疑問符が付く。

しかも低金利がずっと続く可能性は低いので、いま国内債券に投資すると将来の金利上昇リスクも抱える。債券は金利が上がると価格が下がる。通常の指数連動型債券投信の場合、金利が1%程度上がると1割弱の価格下落になり、損失になりかねない。

最近の注目は「個人向け国債10年変動金利型」。金利上昇時にも価格が下がらない商品設計だ。利率は半年ごとに見直されるが0.05%が下限で、金利が上昇すれば利率も上がる「お得」な特徴を持つ。川村氏は「ここまで金利が下がった以上、国内債券は個人向け国債10年変動金利型でいいのでは」と助言する。

アセット・ロケーションで重要なのは長期で期待上昇率が高い資産である国内外の株式を、DCやNISAなどの枠に優先的に配分すること。通常の口座では配当や値上がり益が2割課税だが、DCは運用期間中、課税されない。DCは企業型の加入者が1月末で550万人に広がり、個人型も来年から主婦や公務員なども原則加入できる方向。NISAも非課税枠が今年から年120万円に増えた。

■資産全体で配分

図Cはイボットソン・アソシエイツ・ジャパンが1970年以降、100万円を様々な資産で5年間運用した結果(当時から非課税口座と2割課税口座があったと仮定)。国内・海外先進国株式は非課税口座を使うと、課税口座に比べて全期間平均で11万円のプラス。債券より節税額が大きかった。

DCとNISAには違いもある。NISAの非課税枠の期間は原則5年で、売却するとその分の枠が消えてしまう。逆に原則60歳まで引き出せないDCと違っていつでも売却でき、DCでは投資できない個別株式も対象なのは利点だ。「金融資産全体の中でどう位置づけるかでNISAの使い方は変わる」(ファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子氏)

NISAの5年間の運用で損を出さないことを目指すならバランス型投信などでリスクを抑える手もある。ただ6年目に新たな枠に移管すれば非課税期間の延長ができるし、制度恒久化の議論もある。非課税の恩恵を最大に生かすなら、株式投信など期待リターンの高い資産を割り振ることを考えるのが選択肢だ。

やりがちなのがDCやNISA、通常の課税口座のそれぞれで資産配分をすること。しかし「口座ごとではなく、資産全体で自分の目指す配分になっていればいい」(岡本氏)。もちろん運用資金のすべてがDCやNISAの枠内におさまる場合は、その中で配分をすることになる。(編集委員 田村正之)

■個人向け「10年変動」 1年後は換金可能
個人向け国債10年変動金利型は毎月発行され、ネット証券でも手軽に買える。発行から1年経過すれば中途換金できるため、金利環境が変わり他に有利な商品が出れば乗り換えを考えてもいいだろう。ただし中途解約する際は、直近の利子2回分が差し引かれる。
世界分散投資をしている都内の会社員、水瀬ケンイチさん(42)の資産配分は国内外の株式が7割弱。これらは税制優遇の大きいDCやNISAを優先する一方、残りの慎重運用部分はほぼ個人向け国債10年変動金利型だ。「金利上昇時の価格下落リスクがないなど、日本債券への投資では相対的に優れている商品では」と話している。

[日本経済新聞朝刊2016年4月6日付]

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