売れる「プチ家電」、ジャストサイズで高機能
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これまで家電製品の多くは、新製品が登場するごとに新しい機能が追加され、より大型化していくのがトレンドだった。一方、コンパクトなモデルは大型のものから機能を省いた廉価版というイメージが強かった。
しかし、今その流れに大きな変化が訪れている。高機能ながら本体サイズをコンパクト化した「プチ家電」が増えているのだ。
最初に「プチ」であることを明確にした高級小型家電を生み出したのがパナソニック。2011年12月に「プチ食洗」を発表した。これは単身や夫婦2人などの少人数世帯が増加したことが理由だ。昔は、単身世帯や少人数世帯というと、若年齢層が多かったが、近年ではシニア世帯でも少人数世帯が増えている。そういった人たちは基本性能は高く、それでいてコンパクトであることを求める。
そんなプチ家電にはどんな製品があるのか。今回は「調理」の分野から、「小さくてすごい」白物家電を紹介していこう。
少ない量をおいしく炊くなら小型炊飯器
小型化が進む白物家電の代表が炊飯器だ。
これまで炊飯器は昔から5.5合炊きが中心で、大家族向けにもっと大きな1升炊きを用意するというラインアップだった。しかし、近年、コンパクトな2.5~3.5合炊きの炊飯器が急増している。
実は、このクラスの炊飯器は昔からあった。しかし、それはあくまでも単身者向けや学生向けの低価格炊飯器で、性能も低かった。
それに対して近年増えているのは、各社のフラッグシップ炊飯器が搭載する機能を、小容量サイズにあわせてカスタマイズした「小容量高級炊飯器」。価格も5万円超と決して安くはない。
5.5合炊きと3.5合炊きの高級炊飯器で2合のごはんを炊き比べてみたことがある。結果は「大は小を兼ねず」。2合の小容量で炊く場合、3.5合炊き炊飯器のほうがおいしく炊ける。これは5.5合炊きがパワーが強すぎるため、沸騰までの時間が早く、しっかりと甘みやうまみを引き出せないからだ。毎回1~3合しか炊かないという家の場合、小型炊飯器のほうがおいしいごはんを食べることができる。
現在、小容量高級炊飯器はメーカー各社から発売されている。炊けるごはんの味はメーカーごとに異なるが、同じメーカーなら大きな炊飯器でも小さな炊飯器でもごはんの味は近い。週末に家電量販店で行われる試食などを利用して、好みに合うメーカーの小容量モデルを選ぶといいだろう。
小型だからこそ少ない量のごはんをおいしく炊ける炊飯器のように、小型であることを機能に生かした製品は他にもある。
例えば、三菱電機のレンジグリル「ZITANG」は一般的なオーブンレンジと比べて背が低く、庫内容量約13リットルとコンパクトサイズとなっている。庫内サイズが小さいため、素早く高温にでき、オーブン調理にありがちな予熱が不要なのが特徴。2段調理はできず、背の高い食材も調理できないが、日常的なおかず調理なら全く問題なし。レンジからオーブン、グリルへの自動リレー調理機能も搭載し、半自動でおかず調理ができる。
デザイン性に優れるプチ家電たち
少人数の食卓をおいしく彩ってくれるコンパクトな調理家電も数々登場している。それらに共通するのは、デザイン性にも優れている点だ。
イデアインターナショナルの「BRUNO コンパクト ホットプレート」は近年のヒットプチ家電の一つ。ダイニングテーブルにそのまま置いて使えるデザイン性の高さが魅力だ。ホットプレートのほか、たこ焼きなどもでき、またたこ焼きプレートを使ったアヒージョなども楽しめる。
コーヒーメーカーも小型化している。シロカの「全自動コーヒーメーカー STC-501」はミル機能も内蔵したコーヒーメーカー。豆をセットするだけで、毎朝ひき立てのコーヒーがいれられる。従来のミル付きコーヒーメーカーは構造上大きなモノが多かったが、この製品なら、通常のコーヒーメーカーと変わらないサイズで設置可能。ステンレスメッシュフィルターを採用しており、コーヒー豆の油脂分までしっかりと落としたコクのあるコーヒーが楽しめる。
1人向けのブレンダーも人気だ。従来のブレンダーは大きく、ジュースを作ろうとした場合、大量にできてしまうため、もてあますことも多かった。1人向けのブレンダーならそのままドリンクボトルになるため洗い物も少なくてすむ。カップ部を複数用意して家族で使い分けることもできるほか、保存用キャップを取り付けて、作ったジュースを持ち運んだり、保存したりすることもできる。
1~2人分の煮物を圧力で素早く作れる電気圧力鍋も、昨年から注目を集めているプチ家電。ガスコンロに張り付いていなくてもよく、カレーなども手早く作れる。また、使わない時もコンパクトに収納できる。
メーカーがいちばん力を入れているプチ家電
白物家電を選ぶときに、つい機能が多彩で大量に調理できる大型モデルを選んでしまいがちだが、紹介したプチ家電は、扱える容量を除けば、通常サイズの製品と比べて機能面で劣るところはほとんどない。それどころか小型にすることでメリットも享受できる。小型だからと侮ることなかれ。今メーカーが一番力を入れているのは、この高性能の小型家電なのだ。
(デジタル&家電ライター コヤマタカヒロ)
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